4月から始まったばかりのオープンイノベーション促進税制に、早くも空振りの気配が漂い始めています。新型コロナウイルスの感染拡大で本業の業績が悪化し、経営体力を温存しようと投資を抑制する企業が増えているためです。オープンイノベーションが滞れば、デジタル化など世界で広がる技術開発の潮流に乗り遅れる恐れがあり、政府は「経済活動の本格化が遅れるほど後々まで響く」(経済産業省幹部)と頭を抱えています。
オープンイノベーション促進税制は、企業のスタートアップ出資を税優遇する仕組み。設立10年未満の新興企業に対し、大企業が1億円以上出資すれば出資額の25%を所得控除します。4月末時点で100件程度の問い合わせが寄せられており、企業の注目度は高いものでした。
しかし一方で、投資意欲は急速に冷え込んでいます。デロイトトーマツベンチャーサポートによるアンケートでは、大企業の投資子会社などの9割が、2020年の投資を前年より抑える意向を示しました。なかでも「投資額を半分以下に減らす」との回答は31%に上っています。19年の国内スタートアップの資金調達額は約4400億円で、そのうち3割が大企業などの事業会社によるものでしたが、今年は「強いブレーキがかかる可能性が高い」(大手電気メーカー役員)とみられます。
こうした流れの中で、あえて「逆張り」で新たに投資ファンドを立ち上げる大企業はありますが、やはり限定的です。
<情報提供:エヌピー通信社>