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コラム 2025月11月18日

《コラム》2025年中小企業白書を読み解く 透明性がもたらす成長の好循環

◆「社外に開く」ことが経営力に直結する
 中小企業白書では、企業の情報開示や意思決定の開放性が、成長性や組織力にどのような影響を及ぼすかが分析されています。中小企業においても、経営情報を従業員や外部関係者と共有し、対話を通じて意思決定に反映させることで、業績に好影響をもたらす傾向が確認されています。特に、成長企業ほど事業計画や財務状況を「見える化」し、取引先・金融機関との信頼関係を強化している点が明らかです。

◆社内での情報共有が組織の一体感を生む
 経営者が財務数値や経営方針を積極的に社員と共有する企業では、業務への納得感や主体性が高まる傾向があります。経営の透明性は、単なる報告や開示ではなく、従業員のモチベーションや巻き込み力にもつながっているのです。特に中堅層や現場のリーダー層に対し、経営課題やKPI(重要業績評価指標)の背景を丁寧に伝えることで、自律的な改善行動が生まれ、結果として業績に好影響を与える好循環が形成されます。

◆ガバナンス意識が外部の信頼を獲得する
 外部取締役の導入や経営会議体制の整備など、いわゆる「ガバナンス改革」に取り組む中小企業も増えてきています。これは上場企業に限った話ではなく、特に第三者承継や外部資金の導入を予定する企業にとっては、「社長のワンマン体制」からの脱却が必須です。金融機関・VC・自治体などの支援者から信頼を得るためにも、経営判断の透明性を制度として担保することが求められます。開放性は、資金調達力・人材採用力の向上にも直結するのです。

◆「共有」と「協働」が成長の土台
 経営の透明性・開放性は、単なる形式整備ではなく、経営者自身が変化を受け入れ、周囲を巻き込む姿勢があってこそ成立します。事業計画書の共有、月次業績のオープン化、社内ミーティングでの双方向の議論など、小さな取組の積み重ねが文化を作ります。支援機関や専門家との連携により、統治体制の整備や報告書類の標準化も支援可能です。中小企業がスケールアップを目指すには、「閉じた経営」からの脱却が出発点となるのです。

コラム 2025月11月18日

《コラム》2025年中小企業白書を読み解く 中小企業の海外展開という現実解

◆設備投資が成長への第一歩
 2025年版中小企業白書では、スケールアップに向けた鍵として「設備投資」が明確に位置づけられています。売上拡大や生産性向上を志向する企業の多くが、積極的に設備更新や省力化投資に取り組んでいます。特に、ITや自動化技術への投資は、人手不足や業務効率化の打開策として注目されており、付加価値の高い製品・サービスを生み出す土台となっています。これにより、単なる規模の拡大ではなく「質のある成長」が目指されています。

◆研究開発が差別化を生む
 スケールアップを実現している企業の多くが、研究開発への投資を重視している点も白書では強調されています。中小企業における研究開発投資額は年々増加しており、自社製品の差別化や高付加価値化を狙った技術開発が進められています。特に輸出に取り組む企業ほど、製品の競争力を高めるために研究開発費を手厚く配分しており、この点が海外展開を成功に導く一因となっているのです。

◆海外市場への挑戦は現実的な選択肢
 海外展開は、もはや一部の大企業だけの話ではありません。白書によれば、売上高100億円以上の企業の約4割が輸出を実施しており、中小企業でも輸出によって新たな販路を獲得する動きが加速しています。さらに、輸出企業では経常利益率や付加価値額の増加が顕著であり、「外需の取り込み」が企業体力を底上げする要素になっているといえます。これらは政策支援やパートナーとの連携によって、より身近な成長戦略となっています。

◆支援制度を活かした成長モデルへ
 海外展開や研究開発といった“攻めの投資”を進めるには、当然ながら資金や知見が必要です。そこで活用したいのが、各種の支援制度や専門機関とのネットワークです。たとえば、中小企業基盤整備機構やJETROといった機関が、海外展開支援や現地リスクの相談に応じています。企業単体で乗り越えるには高い壁でも、外部のリソースを活用することで、リスクを抑えながらスケールアップの道筋を描くことが可能になります。

コラム 2025月11月11日

《コラム》NPO法人の収益事業課税要件

 NPO法人(特定非営利活動法人)は、医療、福祉、環境、教育、まちづくりなどの分野で社会貢献を行う存在として大きな役割を担っており、全国で約5万社(令和7年6月末現在)が活動しています。

◆法人税は収益事業にのみ課税される
 NPO法人にも法人税の納税義務があります。NPO法では、NPO法人の法人税等の取扱いについては公益法人等とみなすとされており、法人税法別表第二に記載される公益法人等と同様に、収益事業のみ法人税が課税されます。NPO法人の事業が収益事業に該当するか否かの判断は、法人税法が定める34業種のいずれかの事業に該当し、その事業を継続的、かつ事業場を設けて行っている場合に、収益事業とされます。
 このことはNPO法人が定款に定める特定非営利活動を行っている場合においても、それが収益事業に該当する限り、法人税が課税されることを意味します。

◆34の収益事業は法令で規定されている
 法人税の課税対象となる収益事業の34業種は、物品販売業から労働者派遣業までの事業が限定列挙されています。NPO法人の行う事業がこれらに該当するかは、通達等を参照して個別に判断することになります。 
 課税される根拠は、同種の事業を営む営利法人との競合性から課税の公平をはかるためとされています。新たに収益事業を開始する場合は、収益事業開始届出書を税務署に提出し、青色申告を行います。赤字の事業年度がある場合は欠損金の繰越控除の適用を受けることもできます。

◆継続性と事業場の要件(規模要件)
 法人税の収益事業に該当するかを判断するためのもう一つの要件は、その事業の継続性と事業場を設けていることです。NPO法人の目的とする事業であれば該当する場合が多いものと思われます。

◆会費、寄附金、補助金、助成金の扱いは
 NPO法人に対する支援者からの会費や寄附金、助成金等は、対価性や反対給付があるものを除き、課税の対象になりません。しかし、国や地方公共団体から交付を受ける補助金、助成金等で収益事業の収入や経費を補てんするものは、益金に算入されて課税対象となります。ただし、固定資産の取得や改良に充てるために交付される補助金、助成金等は、その固定資産が収益事業に係る収入や経費であっても、益金不算入となり、収益事業の課税対象となりません。

コラム 2025月11月11日

《コラム》相続取得株式の自己株化 みなし配当課税なし

◆非上場自己株取得の場合の課税原理
 会社の自己株式取得は、資産の取得ではなく、減資と同じ株主資本の部分清算と解するのが税務原則であり、取得自己株数に対応する出資元本を超える払戻し部分について清算配当とみなす扱いになります。その所得は、累進税率の総合課税の配当所得として課税されます。

◆税引き手取りがマイナスとなる過酷な場合
 ところで、非上場株式を相続したため、相続税の納税資金に困り、発行会社に株式買取りを要請することがあります。その場合、相続税と所得税の二重の課税で手取りの著しい減少となる場合があります。最大で、相続税55%、所得税と住民税55.945%(所得税45%+住民税10%+復興特別所得税)です。そういう状況に、全負担の緩和をもたらしてくれる特例があります。

◆過酷を緩和してくれる特例
 以下の条件を満たす場合、その株式譲渡対価の全額を非上場株式の譲渡所得の収入金額とし、その収入金額から取得費および譲渡に要した費用を控除して計算した譲渡所得金額は、申告分離課税で一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)の課税になる、というものです。
 最大のケースで、35.63%(55.945%-20.315%)の税負担が軽くなります。
 なお、取得費を計算する際には、その財産に対応する相続税額を取得費に加算できる特則もあるので、その適用を受けることもできます。

◆対象者・対象物・手続き
①相続または遺贈により取得した財産の中に非上場株式があり、その相続または遺贈について納付すべき相続税額がある個人
②相続取得した非上場株式をその発行会社に相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡し、この特例に係る「届出書」を発行会社に提出する必要があります。
③発行会社は、譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに本店または主たる事務所の所轄税務署長に届出書を提出する必要があります。

◆高税率でない場合にはみなし配当のまま
 ただし、いつでも配当課税より譲渡課税が有利というわけではありません。所得が低い場合には、総合課税+配当控除の方が有利になることもあります。

その他 2025月11月4日

【時事解説】中小企業における価格交渉・価格転嫁 その1

 原材料費やエネルギー費、労務費等が上昇する中、多くの中小企業が価格交渉・価格転嫁できる環境整備が求められています。

 中小企業庁が2025年6月に公表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査結果(2025年3月)」の内容に沿って、中小企業の価格交渉の状況をみると、「価格交渉が行われた」割合は前回調査(2024年9月)から約3ポイント増の89.2%となっており、価格交渉が行われていることがわかります。また、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回調査から約3ポイント増の31.5%となっており、発注企業からの申し入れが浸透しつつあることがわかります。

 次に、価格転嫁率の推移を見ると、2025年3月のコスト全体の価格転嫁率は52.4%であり、前回調査(2024年9月)より約3ポイント上昇しています。

 コスト要素別の価格転嫁率をみると、2025年3月労務費の転嫁率は48.6%となっており、前回調査(2024年9月)から約4%ポイント上昇したものの、原材料費の転嫁率54.5%と比較して約6ポイント低い水準となっています。また、エネルギー費の転嫁率は47.8%となっており、前回調査から約3%ポイント上昇したものの、コスト全般の転嫁率より低い水準となっています。

 さらに2025年3月の価格転嫁率の状況について、受注側企業の取引段階別にみると、「1次請け」から下流に行くほど、価格転嫁率を「0割」と回答した割合が高まっており、価格転嫁が進みづらい傾向にあることがわかります。特に、4次請け以上の階層においては、「全額転嫁できた」企業の割合は15%程度にとどまっています。

 このように受注側企業の取引段階が深くなるにつれて、価格転嫁割合が低くなる傾向がみられるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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