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その他 2024月11月19日
貸借対照表の資産・負債をキャッシュという見地から分類しようとすれば、そもそも、キャッシュ(あるいはキャッシュ同等物)の受け払いがあるかどうかが第一の関門です。その観点から、資産・負債は、キャッシュの受け払いが予定されている売掛金や買掛金などの一般の資産・負債と、キャッシュ移動がない引当金や繰延税金資産・負債などの会計上の損益調整項目とに分けられます。
この両者の相違は分かりやすく、分別が容易ですが、同じキャッシュの受け払いがある一般の資産・負債についても以下のような違いがあることに注意しなければなりません。
まず、資産から見てみましょう。資産は原則として取得価格で貸借対照表に計上されています。一般の資産は最終的にキャッシュでの回収を予定していますが、その回収予定金額が簿価と同じかどうかという点がポイントになります。
一つは契約により回収元本が確定している、受取手形、売掛金、貸付金などの資産があります(現金預金もこれに含まれます)。こうした資産をここでは「元本確定資産」と呼ぶことにします。元本確定資産の回収額は簿価(取得価額)と一致します。
他方、たな卸資産、土地、建物、株式などといった資産の元本回収は、資産を稼働させて収益を生むか時価による売却になりますから、取得価額とは異なる価格で回収されます。これらを「価格変動資産」と呼びます(回収元本が確定していないのれんなどの無形固定資産も含まれます)。
売掛金などの元本確定資産も相手先の倒産などがあれば、当初約束された元本が回収できないこともありますが、よほどのことがない限り、貸借対照表に計上されている簿価で回収できます。ところが、価格変動資産の貸借対照表上の簿価は、元本回収という観点からは、まったく意味を持たない過去の価格になります。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
その他 2024月11月19日
資産に元本確定と価格変動があるなら、負債にも元本確定負債と価格変動負債があってもよさそうですが、負債は買掛金や借入金といったものが主体で、ほとんどが元本確定になります。こうした負債は契約で返済を約束したもので、返済できなければ、契約不履行となり、倒産してしまいますから、何をおいても期日通りにキチンと返済しなければなりません。負債はこのように返済が絶対ですが、それを補う意味で、貸借対照表の貸方には、負債の下に過去の利益の蓄積である返済不要の自己資本が控えます。
元本確定負債で調達した資金で価格変動資産を購入し、想定外に資産価格が値下がりしたり、あるいは売却できなかったりすると、負債の返済に窮することになってしまいます。
価格変動資産は値下がりリスクがあるから、できるだけ持たない方がいいというのではありません。資産は価格が変動するからこそ意味があります。在庫が値上がりしたり、工場で生産する製品が価格上昇したり、買収した子会社が成長するから、企業は利益を上げることができるのです。
つまり、企業の経済行動を貸借対照表に即して解釈すれば、「過去の利益の社内の蓄積である自己資本と契約で確定した社外から調達した負債で、価格が変動する資産を購入して、その資産価値の向上を図ること」ということができます。価格変動資産の保有は利益の源泉なのですから、企業は価格変動資産を取得しなければなりません。とはいっても、価格変動資産はいつも思惑通り上昇するとは限りません。場合によっては下落することもありますから、その時の備えがあるかどうかが問われるのです。
返済不要の自己資本が厚ければ、リスクを取れますが、負債調達を大きくして価格変動資産を増やすと、逆に振れたときの危険性も増大します。単に資産と負債が両建てだからと安心するのではなく、自社の財務体力に照らして、価格変動資産と確定した負債のバランスを見極めることが必要なのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
コラム 2024月11月12日
◆災害と時間外労働の関係
今年は元旦に能登半島での大地震があり、夏には南海トラフ地震の注意喚起がされました。さらに、ここ数年大雨での局地的な水害も多く発生しています。災害は予告なく起きるものですが、一方で、企業は、災害が発生した場合には社会インフラを止めてはならず、可能な限り早急な復旧が求められます。これらの対応のため、従業員に法定労働時間や法定休日を超える労働(時間外労働)をさせる必要が出てくることもあります。時間外労働といえば、労働基準法36条による「36協定」の締結によるものが一般的ですが、同33条では、「災害等による臨時的な時間外労働」が認められています。
◆労基法33条の概要
労働基準法33条を要約すると、「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合においては、企業は、労働基準監督署の許可を受けて、必要な限度の範囲で、時間外労働をさせることができる」とされ、また、同ただし書きでは、「事態が切迫して、労働基準監督署の許可を受ける暇がない場合には、事後に遅滞なく届け出る」ことも認められます。
◆適用上の注意点
労基法33条を適用して、時間外労働をさせる場合には、次のような注意点があります。
・労基法33条を適用する場合でも、割増賃金の支払いは必要になります。
・労基法33条を適用する場合には、いわゆる上限規制が適用されませんが、それゆえ健康障害を防止する措置を講じる必要があります。
・「労基法33条による時間外労働を、従業員は拒否できるか」の問題について、就業規則等に「緊急で必要がある場合には、時間外労働を命ずる場合がある」旨を規定しているのであれば、従業員はその命令に従う義務があります。逆に、就業規則等にこれらの記載がない場合における従業員の義務については、「有り」とする説と「無い」とする説に分かれています。従って、仮に記載がない場合には、復旧作業等に従事する従業員から、個別の同意を得たほうが無難といえるでしょう。
コラム 2024月11月12日
相続で子に居宅を引き継ぐとき、子は既に別居して生計を別にしているが、持ち家ではない場合、居住用宅地について一定の要件を満たすことにより、小規模宅地等の特例を適用して土地の評価額を最大80%(土地面積330㎡まで)減額して相続税の負担を軽減することができます。一般に「家なき子特例」と呼ばれますが、子に限らず親族に適用することができます。
◆被相続人の要件
①被相続人に配偶者がいないこと。
②相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと。
◆取得者の要件
①被相続人の居住用宅地を相続又は遺贈により取得すること。
②居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
③相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと。
④相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
⑤相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
◆老人ホームに入居の場合
相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていなかった場合においても、相続開始の直前において要介護認定、要支援認定等を受けていたこと、老人福祉法等に規定する老人ホーム等に入居等をしていたこと、建物を事業の用、被相続人等以外の者の居住の用に供していないことの要件を満たすときは、入居等の直前まで被相続人の居住の用に供していた宅地等は特定居住用宅地等に該当し、先に掲げた要件を満たすときは特例の適用を受けることができます。
◆孫に遺贈することもできる
「家なき子特例」は被相続人の親族に適用されますので、子に既に持ち家がある場合は持ち家のない孫に居宅を遺贈し、先に掲げた要件を満たすときは、特例の適用を受けることができます。なお、孫は相続人ではないので相続税は2割加算となります。孫世帯の生活設計と合致すれば居宅を承継させる有効な方法となるかもしれません。
税務トピックス 2024月11月5日
では、中小企業を支える支援機関の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。そこで、中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、中小企業支援機関を対象として実施したアンケート調査の結果に沿って、中小企業支援機関が抱える課題についてみていきましょう。
支援機関が事業者に対して支援を行う際の課題について回答割合の高い順にみると、「支援人員の不足(61.9%)」、「支援ノウハウ・知見の不足(56.6%)」を課題として挙げる割合が高くなっています。
次に、事業者が抱える経営課題全般に対する支援(相談)を行う相談員の過不足状況についてみると、支援機関全体としては、半数以上の59.0%が「不足」と回答しています。支援機関属性別に「不足」と回答する割合の高い順にみると、「金融機関(81.1%)」、「商工会・商工会議所(62.3%)」、「税・法務関係士業(57.5%)」の順となっており、「不足」と回答する割合が高くなっており、これらの支援機関において特に人手不足が実感されている様子がうかがえます。
さらに支援機関に対して、2019年と比較した相談内容のジャンルの変化に対する認識について確認したところ、支援機関全体としては、「相談内容のジャンルが広がった」と回答する割合が8割を超えており、事業者から支援機関に寄せられる相談内容が多様化していると感じる支援機関が多い様子がうかがえます。
このように、支援機関は人手不足や支援ノウハウの不足といった課題を抱えており、相談員が不足する傾向にある一方で、事業者から寄せられる相談内容のジャンルが広がる状況がうかがえるのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
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