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コラム 2026月10月6日

《コラム》2026年版中小企業白書を読み解く 付加価値は戦略で決まる

◆差別化を意識する企業ほど付加価値が高い
 2026年版中小企業白書が付加価値を高める経営戦略について興味深いデータを示しています。「差別化を重視している」事業者は「重視していない」事業者と比べて付加価値額の伸びが高く、さらに差別化と外部環境(顧客ニーズ・市場動向等)の両方を意識している事業者は、どちらも意識していない事業者と最も大きな差がついています。
 付加価値を高められるかどうかは、経営者が「どう差別化するか」を真剣に考えているかどうかと、深く関係していることが分かりました。

◆価格で差別化しようとしていないか
 では、どのような差別化が有効なのでしょうか。白書によると、製造業・非製造業ともに差別化で最も重視されているのは「品質の高さ」であり、次いで「顧客対応の柔軟性」「独自の技術・ノウハウ」と続きます。注目すべきは「価格競争力」が上位に入っていないことです。
 価格を下げる方向での差別化は、付加価値そのものを削る行為にほかなりません。「安くする」のではなく「品質を上げる・顧客対応を丁寧にする・独自技術を磨く」という方向こそが、中長期的な稼ぐ力に直結するということを、このデータは明確に示しています。

◆経営計画を策定する企業は約4割
 一方、経営計画については、「策定している」事業者は約4割にとどまり、過半数は策定していないことが明らかになりました。策定している事業者は付加価値の伸びが高い傾向にありますが、それ以上に重要なのが「浸透度」です。経営計画が現場担当者まで届いている事業者は、役員止まり・経営者のみという事業者と比べて、付加価値の伸びが明確に高いことが確認されています。

◆計画は現場に届いてはじめて機能する
 経営計画は「作ること」がゴールではありません。経営層が直接説明し、現場に資料を配布し、進捗を定期的に確認・見直すPDCAを回して初めて機能します。まず自社の差別化の軸を一言で表現できるかどうか、確認してみてください。言えなければ、そこが今期取り組むべき最初の経営課題です。差別化の言語化と、計画の全社浸透。この2つが、稼ぐ力の土台になります。

コラム 2026月10月6日

《コラム》「勘と経験」から抜け出すデータ経営への第一歩

◆経営判断の根拠をデータで示す
 中小企業の経営者から「新しいエリアへの出店を考えているが、どの地域に顧客がいるかわからない」「競合が増えてきたが、自社の商圏に何人の見込み客がいるのか把握できていない」といったご相談を受けることが増えています。感覚や経験に基づく経営判断は大切ですが、金融機関や補助金審査において説得力のある計画を示すためには、客観的なデータの裏づけが不可欠な時代になっています。

◆無料で使える国の分析ツールがある
 こうした課題の解決策として、ぜひ活用いただきたいのが「RESAS(リーサス)」です。RESASは経済産業省と内閣官房が2015年から提供している地域経済分析システムで、登録不要・完全無料で利用が可能です。地域の人口構成・産業構造といった官民のビッグデータを、視覚的に確認できるツールです。2026年6月に大幅なアップデートが行われ、①市区町村単位の人数・滞在時間・消費額を把握できる「クレジットカード消費地分析・消費額分析」、②地域の経済環境を12ページのレポートで自動出力できる「地域経済総合分析」、③観光地分析カテゴリの拡充といった新機能が追加されました。

◆12ページのレポートが一発で出力できる
 今回のアップデートで特に注目したいのは「地域経済総合分析」です。都道府県と市区町村を選ぶだけで、基幹産業の状況・生活関連産業の動向・小規模事業者の状況・将来人口・民間消費の流出入・観光客の動向など、12ページにわたるレポートを自動生成できます。自社の地域がどのような経済環境に置かれているかを把握できるため、新規事業の検討や事業計画の策定において強力な武器になります。補助金申請では「なぜこの地域でこの事業を展開するか」というマーケット根拠の提示に直結します。

◆一度アクセスしてみてください
RESASはhttps://resas.go.jpからアクセスできます。スマートフォンにも対応しており、登録は要らず費用はかかりません。最初は「地域経済総合分析」メニューで自社の地域を選択し、12ページのレポートを出力してみることをお勧めします。普段は感覚でとらえていた地域の経済環境が、データとして目に見える形になります。経営計画の見直しや金融機関への説明資料として活用できますので、一度お試しください。

コラム 2026月09月29日

《コラム》所得区分等に要注意 暗号資産とNFTの課税ルール

◆暗号資産、どこで税金が発生するの?
 ビットコインやイーサリアムといった暗号資産(仮想通貨)が、ずいぶん身近なものになってきました。「少し買ってみた」という方も増えてきたように思います。ただ、税金の面では意外と誤解が多いのもこの分野です。
 まず基本から。暗号資産を売却・交換・支払に使って利益が出た場合、その利益は原則として「雑所得」として所得税の課税対象になります。別の暗号資産と交換した時点でも、商品の購入に使った時点でも、それぞれ課税が生じます。「円に換えていないから大丈夫」は通りません。
 なお、令和8年度税制改正で、暗号資産については今後一定条件下で株や国内FXと同様の申告分離課税として扱われる事になりました。適用は「金融商品取引法の改正法の施行日の翌年1月1日以降」となっており、2028年1月からの見込みです。

◆取得費の計算、届出はしましたか?
 暗号資産を複数回に分けて購入している場合、取得費の計算方法は「総平均法」と「移動平均法」の2種類から選べます。ただし、届出をしなければ自動的に「総平均法」が適用されます。一度選んだ方法を変更するには税務署長への承認申請が必要ですので、最初の年に「どちらにするか」を意識しておくと良いでしょう。

◆NFTの税金は「どう取引したか」で変わる
 NFT(非代替性トークン)は、デジタルの世界で「一点もの(=複製できない)」であることを証明する仕組みです。どう取引したかによって税金の扱いが変わります。自分で制作して販売した場合(一次流通)は雑所得または事業所得、購入したNFTを転売した場合(二次流通)は、原則として譲渡所得に該当し得ますが、営利目的で継続的に売買する場合などは雑所得または事業所得になります。

◆今は損失が出ても、繰り越せない
 給与所得者で、給与以外の所得合計が20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要です。暗号資産の損失は雑所得以外の他の所得との損益通算ができず、翌年への繰越控除も認められていません。NFTは所得区分や保有目的によって取扱いが異なるため、損失が出た場合も個別確認が必要です。

税務トピックス 2026月09月29日

日本病院会 消費税〝損税〟解消を重点要望

 日本病院会はこのほど2027年度の「税制改正要望書」を取りまとめ厚生労働省に提出しました。要望事項は国税6項目、地方税2項目、地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望1項目。

 このうち優先的な上位3項目として、国税では①社会保険診療報酬等に係る消費税の非課税を見直し課税取引に改めること②医療機関の設備投資を支援するための税制を整備すること――を挙げ、地方税では①社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置を存続すること――を挙げて重点的に要望しています。

 国税の要望6項目は①社会保険診療報酬等に係る消費税の非課税を見直し、課税取引に改めること②医療機関の設備投資を支援するための税制を整備すること③持分のある医療法人の事業承継を税制面で支援する制度を整備拡充すること④医療法人の出資評価で類似業種比準方式を採用する場合の参照株価は「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低い方とすること⑤公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制を整備すること⑥医療費控除の制度を拡充すること。地方税の要望2項目は①医療機関における社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置を存続すること②病院運営に直接的又は間接的に必要な固定資産について、固定資産税及び都市計画税並びに不動産取得税、登録免許税の非課税措置を整備すること。地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望1項目は①新興感染症の流行や災害の発生時にも、病院が地域医療の重要な拠点としての役割を十分に果たせるよう、優遇措置を講じること――となっています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2026月09月22日

《コラム》不相当に高額な役員退職金の法人課税

 役員退職金は経営者のこれまでの貢献に応じ、会社の財産状態や収益力などを考慮して支払われますが、退職金が不相当に高額なものとされた場合、その高額な部分は損金となりません。

◆生前退職金を受ける場合
 法人税では役員に支払われる退職金について、その役員の業務に従事した期間、退職の事情、同種の事業を行う法人の役員に対する支給状況等から適正額を算定します。裁判で示される算定方法は、一般に平均功績倍率法と呼ばれる方法です。その役員の「最終報酬月額×勤続年数×類似法人の功績倍率の平均値」で算定されます。

◆不相当に高額な部分の算定
 税務署が示す役員退職金の適正額に対応するためには、その構成要素である役員報酬の額を把握する必要があります。国税庁は調査対象法人と同業種類似法人の役員報酬データを把握しており、これをもとに役員退職金の適正額を算定します。
 納税者は国税庁が持っている個別法人の役員報酬を閲覧することはできませんが、国税庁が公開する「民間給与実態統計調査」や税務関連の雑誌に掲載されるデータをもとに業種ごとの役員報酬額を把握し、上記算式に当てはめて自社の役員退職金の適正額を推計することができます。功績倍率は功労加算金を含めておおむね3倍となる水準が過去の判例で示されています。
 また、最近の判例で法人の役員報酬に「不相当に高額な部分」があるか争われた裁判で納税者は「不相当に高額」な役員報酬は実働のない役員給与や租税回避を企図したものに限られると主張しました。しかし、裁判所は法人税法の趣旨は「課税の公平性の確保」であるとして納税者の解釈を認めませんでした。法人が役員の業績を正当に評価した報酬であっても「不相当に高額」な部分があるとして否認された事例です。

◆死亡して退職金を受ける場合
 役員の死亡時に退職金をもらう場合、役員を被保険者とする生命保険契約を締結し、死亡保険金を原資として遺族に退職金を支払うことがあります。この場合も退職金は適正額であることが求められます。
 保険契約を締結したときに設定した条件は時の経過とともに変化していきます。保険金と同額をそのまま退職金として支払った場合、不相当に高額な部分があると損金不算入となることを踏まえて役員退職金の支払額を決める必要があります。

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