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その他 2026月10月20日

【時事解説】良いインフレは到来するのだろうか? その2

 一方、デフレには元々良いデフレはなく、悪いデフレしかありません。デフレでは、物価が継続的に下落し、先に行くほどモノの値段が安くなるのですから、現在の消費者の購買意欲が減退し、経済は活性化しません。そして、インフレに悪いインフレしかないとすれば、インフレでは物価が継続的に上昇し、消費者の購買力が物価上昇に追いつかず、やはり経済に悪影響を与えます。つまり、物価は継続的に下落するデフレも、上昇するインフレも好ましくなく、安定的に推移するのが望ましいのです。

 そもそも、リフレ派は経済動向と物価について原因と結果を取り違えている、という言い方もできます。「インフレだから景気がいい」のではなく、「景気がいいから結果的にインフレになった」と考えるべきではないかということです。物価を経済低迷の原因と捉えるから、無謀な金融政策に頼ろうとしたのですが、物価は経済状況の結果だとすれば、産業政策、地域政策、人口政策などの日本経済そのものの構造改革が必要になるはずです。経済の構造改革は既得権益の壁が厚く、それを取り崩すのは容易ではありません。それに比べれば、日銀の量的緩和政策は実行しやすいこともあり、金融政策に頼りすぎたという側面もあるのかもしれません。

 アベノミクスでは「デフレ退治」を大命題に掲げたため、金融政策が経済政策の主役に祭り上げられた感があります。しかし、金融政策が経済全体を牽引するというのは金融政策の実力を過信しています。良いインフレで経済を立て直すなどという幻想は捨て、金融政策は物価が大きく変動しないように、金融市場を円滑に運営する役割に徹するべきだと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

その他 2026月10月20日

【時事解説】良いインフレは到来するのだろうか? その1

 政府・日銀はいまだに「デフレ脱却宣言」をしていませんが、現在の物価動向は明らかにインフレに転換しています。果たして、アベノミクス開始当初言われていた経済を好転させる「良いインフレ」は到来するのでしょうか。

 かつて、アベノミクスを主導していた人々は、「日本経済低迷の最大の要因はデフレであり、インフレに転換さえできれば日本経済は回復する」と主張していました。当初、当時の日銀の黒田総裁は「2年で結果を出す」と言っていたのですが、在任中にインフレ目標を達成することはできませんでした。現在のインフレは日銀の量的金融緩和政策の結果ではなく、パンデミックや戦争等による海外発の物価上昇が主因とされています。

 リフレ派の理論には、次の2点で思い違いが生じたことになります。一つは日銀の量的金融緩和政策で物価を自由にコントロールできないということ、そしてもう一つはインフレになったからといって経済状況は改善しないということです。

 これに対し、リフレ派の人々は次のように反論します。そもそもインフレには良いインフレと悪いインフレの2種類がある。良いインフレとは需要が物価を引き上げるデマンドプル型で、このインフレになれば、物価と賃金が好循環に上昇し、経済は活況になる。一方、悪いインフレはコストが物価を押し上げるコストプッシュ型で、このインフレだと経済は好転しない。だから、日銀の金融政策でデマンドプル型インフレを目指すのだ、と。

 しかし、物価と賃金が好循環に上昇するデマンドプル型インフレなど本当に起こせるのでしょうか。リフレ派が想定するのは高度経済成長期のインフレでしょうが、それ以来、半世紀にわたり、デマンドプル型インフレは発生していません。アベノミクスであれだけ金融緩和を行いながら起こせなかったのですから、デマンドプル型インフレなどもはや到来しないことが判明したと考えた方がいいのではないかと私は思います。とすると、インフレに良いインフレはなくなり、悪いインフレのみ残ることになります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

税務トピックス 2026月10月13日

AIで申告漏れリスクをスコア化

 国税庁は、税務行政の実務でどのようにAIを使用しているのかを取りまとめたレポート「国税庁におけるAIの活用」を公表しました。

 「予測AI」については「既知のデータを基にした、将来の数値や状態に関する未知の事象の予測、機械学習、ロジカルな作業に強み」があることから、「申告漏れの可能性が高い納税者の判定等に活用」しているといいます。

 「生成AI」については、「新しいコンテンツ(文書・画像など)の生成、会話機能などに強み」があると評価したうえで、「職員の業務効率化や課税・徴収事務の効率化・高度化、納税者サービスの向上を積極的・計画的に推進するほか、生成AIの業務利用に関する職員全体の意識・スキルの底上げ」を図っていくとしています。また、「取り組みに当たっては、セキュリティやハルシネーションなどのリスク」に十分な注意を払っていくとしています。

 「課税・徴収事務の効率化・高度化に向けたAIの活用」の例としては、「AIやデータ分析を最大限に活用し、申告漏れの把握や調査の高度化」に取り組んでいるとしています。国税庁が保有する膨大なデータを「予測AIによって分析し、各税目等に関して申告漏れのリスクを判定してスコア化する予測モデル」を構築。予測モデルの判定結果に加え「申告書や保有する各種資料情報等を併せて分析・検討し、職員が調査の要否や優先度を最終的に判断した上で、調査必要度の高い納税者に対しては深度ある調査を実施」「予測モデルの判定結果は全国すべての国税局・税務署で活用」しているといいます。

 国税庁では申告漏れのリスク判定以外にも、「多様な観点に特化した様々な予測モデル」を構築しており、例えば「所得税申告の不正還付リスク判定や法人の不正申告のパターン判定など、いくつかの予測モデルの判定結果を全国の国税局・税務署で活用」しているそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

税務トピックス 2026月10月13日

政府税調 賃上げ促進税制の効果疑問視

 政府税制調査会は7回目となる「税制のEBPMに関する専門家会合」を開き、租税特別措置(租特)の適用実態や中小企業税制の効果について、関係省庁から提出された検証報告書をもとに意見交換しました。

 EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)は、エビデンスに基づく政策立案のこと。内閣府ではこれを「政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくもの」と定義しています。

 会合では、「租税特別措置の適用実態調査の結果」について財務省が報告したほか、中小企業庁が「中小企業税制の効果」を示しました。中企庁が提出した資料によると、「中小企業向け賃上げ促進税制」の適用件数は、2024年度実績で27万5014件。同税制による減収額は3330億円だったそうです。これに対し財務省側は、政策効果がないとする分析結果を新たに提示しました。

 「中小企業向け賃上げ促進税制」は、前年度より給与支給額を1.5%または2.5%以上増加させた場合、その増加額のそれぞれ15%または30%を税額控除できる制度。また、一定の基準を満たせば税額控除率が5%上乗せされます。賃上げを実施した年度に控除しきれなかった分については5年間の繰越しが可能となっています。

 財務省がこの「賃上げ促進税制」の適用を受けた企業の賃上げ率を分析したところ、大多数ですでに2.5%を上回っていたそうです。人手不足などを背景に中小企業でも賃上げが実施されているとして、このまま税制優遇を続けていく政策的な意味が薄れていると指摘。すでに大企業向けの賃上げ促進税制は今年3月末で廃止されている点も強調しました。

 この日の会合に出席した専門家からも効果を疑問視する意見が相次ぎました。中小企業向けの賃上げ促進税制は26年度末に期限を迎えます。24年度の減収実績から試算すると、廃止すれば年間約3千億円の財源を捻出できるものとみられます。一方、経済産業省は27年度税制改正要望で同税制の延長・拡充を求めています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2026月10月6日

《コラム》2026年版中小企業白書を読み解く 付加価値は戦略で決まる

◆差別化を意識する企業ほど付加価値が高い
 2026年版中小企業白書が付加価値を高める経営戦略について興味深いデータを示しています。「差別化を重視している」事業者は「重視していない」事業者と比べて付加価値額の伸びが高く、さらに差別化と外部環境(顧客ニーズ・市場動向等)の両方を意識している事業者は、どちらも意識していない事業者と最も大きな差がついています。
 付加価値を高められるかどうかは、経営者が「どう差別化するか」を真剣に考えているかどうかと、深く関係していることが分かりました。

◆価格で差別化しようとしていないか
 では、どのような差別化が有効なのでしょうか。白書によると、製造業・非製造業ともに差別化で最も重視されているのは「品質の高さ」であり、次いで「顧客対応の柔軟性」「独自の技術・ノウハウ」と続きます。注目すべきは「価格競争力」が上位に入っていないことです。
 価格を下げる方向での差別化は、付加価値そのものを削る行為にほかなりません。「安くする」のではなく「品質を上げる・顧客対応を丁寧にする・独自技術を磨く」という方向こそが、中長期的な稼ぐ力に直結するということを、このデータは明確に示しています。

◆経営計画を策定する企業は約4割
 一方、経営計画については、「策定している」事業者は約4割にとどまり、過半数は策定していないことが明らかになりました。策定している事業者は付加価値の伸びが高い傾向にありますが、それ以上に重要なのが「浸透度」です。経営計画が現場担当者まで届いている事業者は、役員止まり・経営者のみという事業者と比べて、付加価値の伸びが明確に高いことが確認されています。

◆計画は現場に届いてはじめて機能する
 経営計画は「作ること」がゴールではありません。経営層が直接説明し、現場に資料を配布し、進捗を定期的に確認・見直すPDCAを回して初めて機能します。まず自社の差別化の軸を一言で表現できるかどうか、確認してみてください。言えなければ、そこが今期取り組むべき最初の経営課題です。差別化の言語化と、計画の全社浸透。この2つが、稼ぐ力の土台になります。

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