お知らせ/トピックスTOPICS

コラム 2025月09月16日

《コラム》中小企業白書を読み解く DXがもたらす変革

◆伸び悩む生産性の現状
 労働生産性については、大企業では増加傾向にある一方で、中規模企業や小規模事業者ではおおむね横ばいが続いており、約10年前と比較すると緩やかに減少しています。コロナ禍からの反動や需要回復による一時的な上昇を除けば、大きな改善は見られません。特に小規模事業者では、業種により生産性格差が顕著で、製造業や情報通信業に比べ、サービス業・小売業では依然として低水準が続いています。人手不足の恒常化が続く中で、少人数で成果を出す体制整備が急務です。

◆設備投資に見る差と課題
 2023年度の中小企業の設備投資額は増加傾向にありましたが、その内容には大きなばらつきがあります。大企業に比べて中小企業は老朽更新に偏り、収益向上や競争力強化を目的とした戦略的投資が限られています。また、資金繰りの問題や先行き不安から投資に踏み切れない企業も多く、結果として労働生産性の伸びを阻害しています。
 ここで重要なのが、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といった支援策を活用し、中長期の視点で投資計画を構築することです。

◆デジタル化の進捗と課題
 DXへの対応状況は、企業間で明確な差が開いています。大企業やIT関連業種では一定の進捗がある一方、中小企業では「そもそも何から始めて良いかわからない」という声も根強く、社内のIT人材不足や初期コストへの懸念が障壁となっています。
 しかしながら、受発注業務や会計処理のクラウド化、在庫管理の自動化といった小規模な取り組みでも、着実な効果を上げている事例が増えており、まずは「できるところから始める」ことが重要です。

◆今求められる経営の姿勢
 生産性向上やDXは、一朝一夕で実現できるものではありません。重要なのは、経営者自らが「変わる覚悟」を持ち、社員を巻き込みながら一歩ずつ進める姿勢です。補助金申請時の事業計画策定においても、自社の強み・弱みを見つめ直すことが第一歩となります。税理士や社労士など専門家の支援も活用しながら、単なる制度対応に終わらせず、企業体質そのものを変革する視点でDX・投資戦略を立てることが、未来の競争力に直結します。

税務トピックス 2025月09月16日

相続税の物納申請わずか50件

 国税庁はこのほど、2024年度の相続税の「物納」「延納」申請・処理状況を公表しました。申請件数は「物納」が50件、「延納」が1197件。20年前(05年度)の申請件数は物納が1733件、延納が5763件なので、当時と比べると物納はわずか2.88%、延納は20.77%に過ぎず、ともに大幅減となっています。

 前年度に未処理で繰り越されていた「物納」の件数は15件で、新規申請50件と併せて合計65件。このうち物納が許可された件数は31件、取下げ件数は2件、却下件数は3件で、処理件数の合計は36件でした。全体の47.69%が許可され、55.38%が処理されています。申請金額は89億円、未処理繰越金額は7億円で、合計96億円。このうち物納が許可された金額は45億円でした。

 「延納」の未処理繰越件数は273件で、新規申請1197件と併せて合計1470件。このうち延納が許可された件数は832件、取下げ件数は251件、却下件数は16件で、処理件数の合計は1099件でした。全体の56.59%が許可され、74.76%が処理されています。申請金額は573億円、未処理繰越金額は140億円で、合計713億円。このうち延納が許可された金額は347億円でした。

 20年前(05年度)からの処理状況をみると、「物納」「延納」とも申請件数・金額が大幅に減少。05年度に物納が許可された件数は2730件、金額は1464億円で、延納のそれは5626件、1479億円でした。当時の物納許可件数は24年度の約88倍、金額は約33倍。延納許可件数は約7倍、金額は約4倍でした。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2025月09月15日

《コラム》中小企業白書を読み解く 雇用維持のための対策を

◆共通課題としての人材確保
 2025年版中小企業白書によると、全国17,848者の中小企業・小規模事業者を対象とした帝国データバンクの調査において、「人材確保」が最重要課題として挙げられた割合が最も高い結果となりました。中規模企業では「省力化・生産性向上」、小規模事業者では「事業承継」がそれに続きますが、いずれにせよ人材の確保・活用が経営基盤の安定に直結することは明白です。業種・企業規模を問わず、雇用を取り巻く環境が厳しさを増している現状が浮き彫りとなりました。

◆従業員不足の構造的背景
 同白書では、従業員数の「過不足率」に関する景況調査も示されており、特に中規模企業で人材の「不足感」が強く、建設業においてはその傾向が顕著です。これは一過性の現象ではなく、労働人口の減少や業種ごとの働き手確保の難しさなど、構造的な課題が背景にあると分析されます。このような中で、採用戦略の見直しや職場環境の改善を通じて、いかに「選ばれる企業」になるかが問われています。

◆実務で意識すべきポイント
 人材不足への対応としては、単に採用枠を増やすのではなく、定着率向上に向けた工夫が求められます。
 例えば、短時間勤務制度やリモートワーク制度の導入による柔軟な働き方の提供、資格取得支援などキャリア形成への投資、職場内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。加えて、DXや省力化設備の導入を通じて限られた人材で最大限の生産性を確保する施策も有効です。助成金制度の活用や、社会保険労務士との連携による就業規則の整備も併せて検討したいところです。

◆次世代に向けた布石を
 少子化が進む現代において人材の確保は今後ますます難易度が増すと予想されます。事業承継と絡めた「次世代人材」の育成、外国人材や高齢者の戦力化、業務の見直しによる人手依存からの脱却など、中長期的視点を持った戦略が必要です。労働市場の変化を的確に捉え、外部支援を活用しながら、自社に適した雇用維持・拡大施策を構築することが、これからの中小企業経営における生存戦略の鍵となります。

税務トピックス 2025月09月9日

税率が低いほどスポーツが強くなる?

 ホームタウンの税金が安いほどプロスポーツチームは強くなるようです。ウィーン経済産業大学の教授が発表した論文によれば、1994年から2016年までの23年間の米NFL(ナショナルフットボールリーグ)所属チームの成績と所在地の個人所得税の税率を調べたところ、最も税率の高いカリフォルニア州のチームは同税のないフロリダ、テキサス、テネシー、ワシントンのチームより年平均2.75勝少なかったそうです。また16年間にプレーオフに進出したチームとできなかったチームの税率を比べたところ、前者より後者のほうが3割税率が高かったとのことです。

 じつは、この研究結果にはNFLならではの事情が大きな影響をおよぼしています。本来であれば全米のなかでも平均所得の高いカリフォルニアはそれだけ高額な年俸を支払って有力選手を集められるはずですが、NFLでは戦力均衡化のために厳しいサラリーキャップ(年俸上限)が定められていて、有名選手らの年俸は横並びとなる傾向にあります。

 一方で米国では州ごとに個人所得税などの税率が大きく異なるため、同じ年俸を受け取っても実際の手取りには差が出てしまいます。多くの手取りを得たい有名選手は、自然と税率の低い地域のチームを選ぶ可能性が高くなるわけです。

 給料の多寡が仕事へのモチベーションに直結するのは自然な話でもあり、一定の説得力はありそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2025月09月2日

《コラム》夫婦で共有する居住用マンションの譲渡所得

 マンション市場は海外からの投資を呼び込み、空前の価格高騰を引き起こしています。不動産経済研究所の公表する2025年2月分の不動産価格指数は、211.8(2010年平均=100)、この15年で2倍以上となり、この機会に自宅を売却する人もいます。

◆譲渡所得に課税
 不動産の保有期間中のキャピタルゲインは売却によって実現し、その収入金額は担税力を生むので、譲渡所得に課税されます。
 譲渡所得は、売却による収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて算出します。取得費はマンション取得時の購入価額、印紙代、購入手数料、登記費用など。譲渡費用は売却時の仲介手数料、印紙代などです。

◆居住用は譲渡所得から3,000万円を控除
 居住用不動産を売却すると新たに居住用不動産を購入する資金が必要となり、売却によって得た担税力が減殺されてしまいます。そこで居住用不動産の譲渡所得から3,000万円を控除する制度があります。
 この制度は夫婦で共有するマンションを売却する場合にも、一定の要件を満たせば適用され、それぞれの所有持分に応じて譲渡所得から共有者一人につき3,000万円まで控除が行われ、税額を圧縮できます。

◆3,000万円特別控除の主な要件
 3,000万円特別控除は、現に自分が住んでいる家屋の譲渡、家屋とその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの家屋・土地等の譲渡などに適用されます。
 また、譲渡した年の前年、前々年に、既にこの3,000万円控除の特例等を受けている場合は、この特例は適用されません。
 住宅ローン控除は入居した年、その前年、前々年に3,000万円控除の特例を受けた場合には適用されません。なお、住宅ローン控除を受けた物件を譲渡した場合、その物件に3,000万円控除の特例は適用されます。その他の要件は国税庁のタックスアンサー等で確認できます。

◆所有期間10年超は、更に軽減税率を適用
 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用不動産で国内にあるものを売却する場合、3,000万円の特別控除額を差し引いた後の長期譲渡所得に軽減税率が適用されます。長期譲渡所得金額6,000万円以下の場合、所得税率10%(通常15%)、住民税率4%(通常5%)が適用され、負担が更に軽減されます。

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