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コラム 2026月08月18日

《コラム》相続時精算課税贈与で家族会議

◆実質は相続税の前払い
 相続時精算課税制度では、贈与者が亡くなると先に贈与した財産の価額を相続財産の価額に加算して相続税額を計算します。既に納付済の贈与税額は相続税額から控除され、贈与税額の方が大きいときは差額が還付されます。贈与ではあるものの、相続税額の計算で納税額を計算し直すため、実質は相続税の前払いといえます。

◆メリット1.少ない税負担で財産移転
 相続時精算課税贈与では贈与財産の価額から特別控除として2,500万円が控除され、その年に控除しきれなかった残額は、次年度以降の贈与まで持ち越されます。贈与税は控除後の残額に対し、一律20%と低率のため、贈与時の税負担は少なく、不動産や金融資産などまとまった金額の財産を早期に移転することができます。
 さらに、令和6年1月1日以後の相続時精算課税贈与には基礎控除110万円が設けられ、特別控除2,500万円の前に基礎控除が控除されるようになりました。その年の贈与額が110万円以下であれば、贈与税を申告する必要もなく、また、基礎控除110万円までの贈与部分は相続財産の価額に加算されないので負担が軽減されています。

◆メリット2.家族で相談する機会ができる
 相続の備えは子どもからは言い出しにくいものです。相続時精算課税贈与は、将来の相続で精算が行われるため、贈与の検討をきっかけに家族で財産の利用方法について話す場をつくることができます。親は財産移転について自分の思いを伝え、配偶者や子どもたちも自身の生活スタイルを想定して話すことができます。家族で早期に相続人の人生設計に応じた計画を立てることが可能となり、それぞれが納得できる道筋を見つけることにもつながります。

◆他にもあるメリット
 相続税の申告では贈与時の価額で評価されるので、土地や株式などの資産の価格が上昇する市場環境のもとでは税負担が少なくなります。また、地震や津波など災害で贈与を受けた財産が被害を受けたときは、相続時の評価額が減額されます。

◆小規模宅地の特例は適用不可
 なお、小規模宅地の特例は相続または遺贈で取得した不動産に適用され、贈与を原因とする相続時精算課税には適用されません。相続時精算課税は一度選択すると撤回できないので、相続財産に不動産があるときは、事前の検討が必要となります。

コラム 2026月08月18日

《コラム》人手不足を解消する手段 省力化補助金の活用

◆生産性を上げ、賃上げへつなげる
 人手不足は今や多くの中小企業にとって経営の最前線課題です。求人をかけても応募が来ない、ベテランが退職すると現場が回らない、こうした声を経営者の方からよく伺います。そのような状況を打開する有力な選択肢の一つが、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。IoT・AI・ロボット等を活用したオーダーメイド設備の導入費用を補助率1/2(小規模事業者は2/3)で支援する制度で、補助上限額は従業員数に応じて750万円から最大8,000万円です。

◆「オーダーメイド設備」のポイント
 本補助金で最も重要なポイントは「オーダーメイド設備」の要件です。既製品をそのまま購入するだけでは対象外となりますが、複数の汎用設備を組み合わせて導入したり、自社の現場環境に合わせてカスタマイズしたりすれば対象となります。直近の第5回公募の採択事例では、建設業者が油圧ショベル・ICT測量機・油圧ブレーカ等を組み合わせて施工工程を再設計し、1日当たり3.1時間の作業削減を実現した事例が採択されています。重要なのは「省力化の効果を数字で示せるか」です。削減できる作業時間や工程数を具体的に計算し、投資回収期間の根拠も明示することで審査での評価が大きく高まります。

◆賃上げ要件と返還リスクを正しく理解する
 採択されることがゴールではありません。本補助金には3~5年の事業計画期間を通じた義務が伴います。毎年の労働生産性を年平均成長率4.0%以上向上させること、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させることが必須で、給与の目標を達成できなかった場合は達成率に応じて補助金の返還を求められます。また、事業場内の最低賃金を地域の最低賃金より30円以上高く維持することも毎年の要件です。補助金を受け取った後に返還が発生するリスクを十分に理解した上で、無理のない計画を立てることが大切です。

◆加点項目の事前準備が採択率を左右する
 申請書の内容に加え、加点項目の取得も採択率の向上に直結します。事業継続力強化計画の認定取得、中小機構「省力化ナビ」へのアクセス登録、えるぼし・くるみん・健康経営優良法人の認定などが加点対象となっています。現在第7回公募が進行中で、申請受付は7月上旬開始、締め切りは7月下旬が予定されています。

コラム 2026月08月11日

《コラム》補助金頼みを卒業する経営へ

◆国民から寄せられた補助金に対する声
 今年1月から2月にかけて、内閣官房が実施した「租税特別措置・補助金・基金の適正化に向けた提案募集」に、37,174件もの提案・意見が寄せられました。
 その中で、中小企業向け補助金に関しては「補助金が生産性の低い企業の延命につながっている」といった厳しい指摘が相次ぎました。補助金依存への強い問題意識が国民から寄せられた意見の中に表れていることは確かです。政府は2027年度の予算編成・税制改正に向けてこれらの意見を参考にする方針を示しています。

◆補助金ありきの計画が招くリスク
 補助金の申請・報告手続が複雑で、申請支援に外部専門家が関与する構造についても、今回指摘が寄せられました。「補助金が取れたから事業を始める」という発想には根本的なリスクが潜んでいます。補助金は交付決定後も実績報告・精算の手続が残り、補助対象経費として認められない支出や交付条件違反があれば、補助金額の減額や返還を求められる場合があります。補助金を前提に設備投資や採用を進めると、入金時期の遅れや自己資金負担により、キャッシュフローを圧迫するリスクがあります。補助金はあくまで事業を加速させる「燃料」であり、エンジンそのものではないのです。

◆補助金なしでも回る事業設計を
 では、補助金とどう付き合えばよいのでしょうか。正解は「補助金がゼロになっても成立する事業計画に、補助金を後乗せする」という設計思想です。
 まず自社の強みと市場の需要を照らし合わせ、補助金なしで黒字化できる道筋を先に描く。その上で、その投資をより早く実現するための手段として補助金を活用する。この順序が守られていれば、仮に不採択になっても経営は揺らぎません。

◆自立型経営への転換が今問われる
 今回の見直し議論は、補助金が即座になくなることを意味するものではありません。しかし今後は、制度設計や公募要領、審査項目において成果指標や費用対効果の説明がより重視される可能性があります。
 価格転嫁力の強化、生産性の向上、財務体質の改善といった本質的な経営改善の延長線上に補助金を位置づけること、これが補助金の恩恵を最大限に活かす道です。「補助金がなくなっても生き残れるか」という問いを、今一度自社に投げかけてみてください。

コラム 2026月08月11日

《コラム》柔軟な働き方とテレワーク

◆昨年10月に改正された育児・介護休業法
 昨年10月の育児・介護休業法の改正で、育児について小学校就学前の子供を養育する労働者に「フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰り下げまたは繰り上げ、育児短時間勤務、保育施設設置」などに加え「月10日以上のテレワーク」を含む複数の措置のうち事業主に2つ以上を講ずることが義務付けられました。

◆在宅勤務の普及と定着
 在宅勤務はオフィスの集中する都市部より通勤の混雑を避けるために前から行われてはいましたが、新型コロナをきっかけに期せずして多くの企業が導入するようになったということです。今では出勤体制に戻っている企業も多くなりましたが、在宅勤務を新たに導入したり、継続しているところも多い状況です。オンラインでの会議や取引先とのうちあわせも一般的になりました。
 育児・介護と仕事の両立を図りたい社員にとってテレワークが便利な働き方であることは確かで、今回の改正ではこうした状況を受けて柔軟な働き方の1つの選択肢と規定されました。
 テレワークは会社の社屋以外で勤務する形態です。自宅以外にコワーキングスペース、サテライトオフィス、移動中や、喫茶店などのノマドワークも含まれます。育児・介護のテレワークはおおむね在宅勤務が多いものと思います。

◆テレワークの働き方のルールを規定しよう
①勤務管理の方法 
 出勤がないのですからタイムカードなどに打刻はできません。始業・終業の時刻を把握するにはパソコンやインターネットで業務を行うことが多いため利用状況を業務用パソコンのログから確認し、各日の労働時間を把握します。
②同時にmailやChatで「業務を開始します」「休憩のため離席します」「再開します」「本日の業務を終了します」等連絡を受けるようにするのがいいでしょう。
③経費負担のルール
 テレワークについて通勤定期代の支給をやめて、出勤した分の実費を払うことに切り替えた企業も多いようです。業務に従事している時間の電気代、通信費の負担に応じた在宅手当を支給するなどの対応をとることもあります。

その他 2026月08月4日

【時事解説】中小企業の成長に向けた設備投資 その2

 では、中小企業において成長に向けた設備投資は具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで「中小企業白書2026年版」において、思い切った大型設備投資を実施し、企業規模の拡大や、付加価値の向上を実現している企業の事例として紹介された有限会社いろは堂(本社:長野県長野市)の取組みについてみていきましょう。

 長野県長野市の有限会社いろは堂は、長野県の郷土食「おやき」を製造・販売する企業です。おやきの認知度向上は事業成長のチャンスであったものの、同社は生産能力に課題を抱えていました。そこで同社は、生産能力の拡大を目指して新工場の設立を決断しました。

 当時専務取締役だった現社長が投資計画を主導し、計画当時の年商の約2倍となる大規模な設備投資を実施し、新工場を2022 年に開業しました。新工場には最新の生産設備を導入することで生産能力は1.5 倍に増強されました。さらに、製造担当者と一丸となって業務フローや動線を見直すことで業務の効率化も実現しました。また、製造以外にもカフェやショップ、工場見学、おやき作り体験など様々なコンテンツをそろえ、幅広い世代に向けた「おやき文化の発信拠点」としての機能を持たせました。

 新工場の開業により、売上高は同社計画を上回る実績で推移しています。想定を超える原材料価格高騰の影響を受けながらも、付加価値率を向上させ、かつ従業員の賃上げにも取り組んでいます。また、既存のおやきのイメージを覆す施設が反響を呼びおやき自体の知名度も上昇し、他社から商品開発等の引き合いが急増しました。

 このように成長に向けた設備投資の取組によってプレゼンスが向上し、販路拡大の実現につながっているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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