金密輸による脱税額が、前年から6割減少しました。近年、金密輸を利用した脱税は著しい増加傾向にありましたが、今年に入ってのコロナ禍による旅客の急減に加えて、昨年から罰金が引き上げられるなど厳罰化したことが背景にあるとみられています。
財務省が11月上旬に発表したデータによれば、昨年7月から今年6月までの1年間に発覚した金密輸による消費税の脱税は199件。脱税額は3億6071万円で、前年同期比で62%減少しました。
金の価格は世界共通ですが、日本国内で売買をしようとすると消費税がかけられます。1億円の金塊を国内の貴金属店が買い取ろうとすると、売り主に対して消費税10 %を上乗せした1億1千万円を支払わなければなりません。これを踏まえ、国外から日本に金を持ち込む場合には、税関であらかじめ消費税10%分を納めることが義務付けられています。
しかし密輸すれば税関を通らないため、消費税分を納める必要がありません。そうして持ち込んだ金を国内で売却すれば、たとえ外国で正当な価格を払って金を入手していたとしても、消費税分がまるまる儲けになります。昨年10月に消費税が10%に引き上げられたことで、金密輸の〝旨味〟が増したため密輸による脱税の増加が懸念されていました。
そこで2018年4月からは、それまで金密輸に対する罰金が1千万円以下だったところを、密輸によって脱税された額が100万円を超える時には脱税額の10倍を罰金に引き上げられました。1億円の金を密輸して1千万円の儲けを得るケースであれば、従来なら最大でも1千万円の罰金で済んでいましたが、見直し後は1億円を科されることとなっています。こうした厳罰化により金密輸の〝旨味〟を減らし、脱税額の激減につながったものとみられます。
<情報提供:エヌピー通信社>