では、中小企業ではIT人材の確保と育成が具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2021年版』において、IT人材の確保によりIoT事業の開発体制を構築し新規事業への参入を実現した企業の事例として取り上げられた、株式会社木幡計器製作所(大阪府)の取組みについてみていきましょう。
株式会社木幡計器製作所は、1909 年創業の圧力計専業メーカーです。同社社長は、管理コストを抑えつつ安全性の確保を実現したいユーザー企業側の潜在的なニーズを発見し、IoTシステムで管理することで、これまで独立していた工業計器のネットワーク化と遠隔での保全管理が可能になると考えました。しかし、IoT関連製品の新規事業開発に向けて、IT人材の確保が課題となりました。
そこで同社は、大手電機メーカーから早期退職した電子回路のベテラン設計者2名を採用、翌年には更に2名、大手企業出身の専門人材も加わりました。大手企業と同社では企業文化が異なることから、一体感を高めるきっかけとして朝礼後の清掃において従業員をチームに分けて、社員間で意見交換する機会を作りました。また、IoT関連の展示会に出展する際に、中途採用メンバーとプロパー社員が一緒に準備を進めることで、プロパー社員の知識が増えていきました。 試作開発や従来製品の不具合の場面でもプロパー社員と中途採用メンバーが協力することで距離が縮まり、社内にIoT製品開発に向けた土壌が醸成されていきました。こうして「後付けIoTセンサ・無線通信ユニット」を開発するに至り、同社の主力製品の一つにまで成長していきました。
このようにIT人材を確保した場合には、既存社員との融合がカギとなるのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)