円安は輸出型企業の業績に貢献します。ただ、その貢献の仕方が以前とは様相を異にしていることに留意しなければなりません。
昔の大規模製造業は日本で製造した製品を海外に輸出して、その代わり金を獲得する形で成長してきました。ですから、円安に振れ1ドル100円が130円になると、海外で同じ1ドルで販売しても、円での受け取り額は30円増えることになりますから、国内での円貨の手取りキャッシュが増加します。それは当然、日本の親会社単体の業績を名実ともに引き上げます。
しかし、この形態だと、賃金の安い労働力で作ったものを海外に輸出することになり、輸入国側の当該産業の雇用機会を奪うことにつながり、「失業の輸出」だとの批判が強まってきました。そこで、製品力に自信があり資本力も豊富な大企業は、徐々に現地子会社を設立し、海外の現地生産に切り替える動きが加速しました。現地子会社の生産では主として、現地の労働力を雇い、現地で資材を購入、販売するのですから、製品輸出に比べて、モノやキャッシュが日本を経由する度合いは大幅に減少します。それでも円安はこの企業の業績を引き上げます。というのは現地生産の売上げや利益は連結子会社として円換算し親会社の連結業績に組み込まれるからです。円換算すれば、円安になるほど、海外子会社の売上や利益金額が多くなりますから、連結業績は向上します。
第一のパターン(製品輸出)も第二のパターン(現地子会社生産)も円安になるほど、連結決算上の企業業績は向上しますが、中身は異なります。第一のパターンは親会社単体の手取り円貨額が増えるのですが、第二のパターンは日本の親会社の円貨額が増えるのではなく、連結決算において現地子会社の円換算額が増えるに過ぎません。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)