では、ローカルベンチマーク(以下、「ロカベン」)は具体的に中小企業においてどのように活用されているのでしょうか。そこで中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、ロカベンを活用した企業の事例として紹介されたわさび屋株式会社(本社所在地:岐阜県郡上市)の取組みについてみていきましょう。
わさび屋株式会社は、わさびの栽培からわさび加工食品の製造・販売を行う企業です。同社ではコロナ禍により経営環境が悪化したことを受け、民間金融機関による実質無利子・無担保融資を活用しました。その一方で、今後の元金返済開始に備えて、経営改善の取組みを行う必要がありました。
こうした状況下で、現社長は、岐阜県信用保証協会よりロカベンの活用について提案を受けました。その後、実際にロカベンを作成するにあたり、「業務フロー」、「商流」の内容に沿って保証協会や同社の従業員と対話しつつ、自社の業務を5つに分けて業務内容と差別化のポイント(強み)をまとめました。
こうした取組みにより、他社との差別化ポイントに気づくことができたことに加え、ロカベンの「4つの視点」を作成する中で、「後継者の育成」、「在庫管理・取引先管理のデジタル化」などの課題も明確になりました。また、全従業員が業務全体を把握し情報を共有することができるなど、従業員の意識改革にもつながりました。その後、同社では、ロカベン作成により気付いた自社の強みや知的資産を活かしつつ、大学と連携し新商品の開発に成功しました。
このように、ロカベンの活用は、企業の経営者が自社の事業への理解を深めるだけでなく、経営課題を改善し新事業展開に向けて踏み出すことにもつながるのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)