働く人の年金支給額を減らす在職老齢年金制度で、制度がなければ60代の男性でフルタイム就業を選ぶ人が約14万人増えるとの分析結果を内閣府がまとめました。深刻化する人手不足に対応するため、政府は制度の撤廃を視野に入れた見直しを検討しており、今後の議論に影響を与えそうです。
在職老齢年金制度は、厚生年金保険に加入して働いている高齢者が対象。60~64歳では年金と賃金の合計が月28万円、65歳以上では月46万円を超えると年金支給額が減額されます。賃金が増えるほど減額幅は大きくなり、「フルタイムの就業をためらわせる要因になっている」(政府関係者)との指摘があります。
内閣府は、中高年者の就業状況などを調査した国のデータに基に、在職老齢年金制度や健康状態、親の介護、企業の継続雇用制度の有無など、どのような要因が就業選択に大きな影響を与えているかを分析。在職老齢年金制度がない場合、60~69歳の男性で、パートを選択する人は6.4万人減り、働かない選択をする人も7.7万人減少。その分、フルタイムを選ぶ人が約14万人増えるとの結果を示しました。
政府は今年の「骨太の方針」で在職老齢年金制度の見直しを明記。「高齢者の勤労に中立的な公的年金制度を整備する」として制度の廃止や減額幅の縮小などを検討する方針です。厚生労働省の有識者会議で4月から議論を開始しており、2020年の通常国会への法案提出を目指しています。
ただ、制度を撤廃すれば支給停止している年約1兆円が年金財政の重荷となります。制度改正の効果で高齢者の就労時間が増え年金納付額が増えなければ、支払いだけがかさむ結果に終わりかねません。
<情報提供:エヌピー通信社>