国税庁は7月1日に発表した路線価の減額補正を行わないことを10月下旬に発表しました。新型コロナウイルスの影響で地価が大幅下落する恐れがあるとして、減額補正が検討されてきましたが、地価が路線価を下回った地域が確認されなかったため、引き下げないことを決めたものです。
国税庁が根拠としたのは国土交通省の都道府県地価調査で、今年7月1日時点の地価が前年同期と比べ、住宅地で0.4%、商業地で1.4%の下落にとどまりました。さらに1月から6月の間に相続や贈与の対象となった土地を国税庁が外部専門家に委託して調べたところ、路線価が時価を上回る土地はなかった点も影響しています。
今回の調査にあたって国税庁は「コロナ禍での大幅な地価下落は確認できなかった」として減額補正を見送りましたが、大阪市中央区の宗右衛門町と名古屋市中区の錦三丁目は19%、東京都台東区の浅草一丁目では16%の下落となるなど、下落率が15%を超えた地域は合計6地点に及んでいます。全国平均で見ても1%近くは減少していることから、多くの土地が減額の対象となってもおかしくない状況でした。
路線価は、国税庁が1月1日の時点での全国の主な道路に面した土地について1平方メートル当たりの評価額を算定したもので、相続税や贈与税を計算する基準となります。減額補正の見送りは多くの相続人に影響を与えそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>