銀行の強みは顧客との密着度の高さだと言われてきました。それを支えたのは、至る所に張り巡らされた店舗網と、そこに配置された人員です。近くに店舗があることで、地域の人が気軽に来店でき、担当者が顧客の店や自宅を頻繁に訪問することで、顧客との密着度を高めます。銀行によって商品力は違い、金利の高い銀行や低い銀行がありますが、たとえ多少商品力が劣っていても、顧客との親密度の高さで商品の劣後性をカバーし、取引の維持・拡大を図るというのがこれまでの銀行の基本戦略だったと思います。
しかし、今になってみると、商品の劣後性を顧客との親密度でカバーできたのは、情報の遮断性が大きな要因として作用していたことが分かります。ネットの普及前は、他銀行の金利等の商品情報を広く収集することは、普通の人にはかなり困難なことでしたし、また、たとえ情報を収集できたとしても、対面営業が原則でしたから、取引することはもっと大変でした。
しかし、ネットの普及は軽々とその壁を乗り越えます。商品情報の収集・比較は極めて容易ですし、パソコンやスマホでの電子取引も簡単にできるようになりました。しかも、銀行が取扱うカネという商品には困った特色があります。他の形のある商品なら、デザイン性とか機能性に特色をつけることで、値段の差を跳ね返すことが可能ですが、カネは金利以外の差異を見つけにくいのです。金利だけを比較すればいいので、ネットが普及すると、簡単に優劣がついてしまいます。こうなると、かつては強みであった稠密な店舗網は一気に重荷に転化してしまいます。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)