では、事業承継を契機とした企業成長に向けて、後継経営者にはどのような取組みが求められるのでしょうか。そこで中小企業庁編「中小企業白書2023年版」において、後継経営者が事業承継後を見据え、製品開発に向けた社内体制を整えたことで成長につなげた事例として紹介された、ダンレックス株式会社(東京都中央区)の取組みについてみていきましょう。
ダンレックス株式会社は工事現場で使用される保安灯や安全ベストなど、保安用品の企画・開発・販売を行う企業です。現社長は、大手機械メーカーで勤務した後2014年に入社、営業を担当する中で、他社製品との違いを打ち出せず価格競争に陥っている状況に危機感を抱きました。
こうした状況の打開策を検討するべく、時代のニーズに合った製品を開発し、知的財産権を活用して他社と差別化を図ることが自社の成長に向けて重要だと考え、事業承継前の段階から準備を始めました。
まずは製品開発の土台づくりとして、現社長の工業高校時代の担任講師に依頼し、社員向けに月1回の勉強会を開催することで社員の基礎知識を着実に増やすとともに、現社長自ら社員と密にコミュニケーションを取りつつ、新製品に関する意見やアイデアを出しやすい環境づくりに努めました。さらに、年に1回は特許出願を行うなど、知的財産権の取得にも積極的に取組むことで、他社製品との差別化やブランドイメージの向上を図りました。
上記の事業承継前からの取組みが奏功し、社長就任以降売上高が増加傾向にあるとともに知的財産権の取得も進んでいます。
このように、後継経営者が事業承継後を見据え、新たな取組みを行うことが、承継後の自社の成長・発展に結びつくのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)