貸借対照表の資産・負債をキャッシュという見地から分類しようとすれば、そもそも、キャッシュ(あるいはキャッシュ同等物)の受け払いがあるかどうかが第一の関門です。その観点から、資産・負債は、キャッシュの受け払いが予定されている売掛金や買掛金などの一般の資産・負債と、キャッシュ移動がない引当金や繰延税金資産・負債などの会計上の損益調整項目とに分けられます。
この両者の相違は分かりやすく、分別が容易ですが、同じキャッシュの受け払いがある一般の資産・負債についても以下のような違いがあることに注意しなければなりません。
まず、資産から見てみましょう。資産は原則として取得価格で貸借対照表に計上されています。一般の資産は最終的にキャッシュでの回収を予定していますが、その回収予定金額が簿価と同じかどうかという点がポイントになります。
一つは契約により回収元本が確定している、受取手形、売掛金、貸付金などの資産があります(現金預金もこれに含まれます)。こうした資産をここでは「元本確定資産」と呼ぶことにします。元本確定資産の回収額は簿価(取得価額)と一致します。
他方、たな卸資産、土地、建物、株式などといった資産の元本回収は、資産を稼働させて収益を生むか時価による売却になりますから、取得価額とは異なる価格で回収されます。これらを「価格変動資産」と呼びます(回収元本が確定していないのれんなどの無形固定資産も含まれます)。
売掛金などの元本確定資産も相手先の倒産などがあれば、当初約束された元本が回収できないこともありますが、よほどのことがない限り、貸借対照表に計上されている簿価で回収できます。ところが、価格変動資産の貸借対照表上の簿価は、元本回収という観点からは、まったく意味を持たない過去の価格になります。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)