資産に元本確定と価格変動があるなら、負債にも元本確定負債と価格変動負債があってもよさそうですが、負債は買掛金や借入金といったものが主体で、ほとんどが元本確定になります。こうした負債は契約で返済を約束したもので、返済できなければ、契約不履行となり、倒産してしまいますから、何をおいても期日通りにキチンと返済しなければなりません。負債はこのように返済が絶対ですが、それを補う意味で、貸借対照表の貸方には、負債の下に過去の利益の蓄積である返済不要の自己資本が控えます。
元本確定負債で調達した資金で価格変動資産を購入し、想定外に資産価格が値下がりしたり、あるいは売却できなかったりすると、負債の返済に窮することになってしまいます。
価格変動資産は値下がりリスクがあるから、できるだけ持たない方がいいというのではありません。資産は価格が変動するからこそ意味があります。在庫が値上がりしたり、工場で生産する製品が価格上昇したり、買収した子会社が成長するから、企業は利益を上げることができるのです。
つまり、企業の経済行動を貸借対照表に即して解釈すれば、「過去の利益の社内の蓄積である自己資本と契約で確定した社外から調達した負債で、価格が変動する資産を購入して、その資産価値の向上を図ること」ということができます。価格変動資産の保有は利益の源泉なのですから、企業は価格変動資産を取得しなければなりません。とはいっても、価格変動資産はいつも思惑通り上昇するとは限りません。場合によっては下落することもありますから、その時の備えがあるかどうかが問われるのです。
返済不要の自己資本が厚ければ、リスクを取れますが、負債調達を大きくして価格変動資産を増やすと、逆に振れたときの危険性も増大します。単に資産と負債が両建てだからと安心するのではなく、自社の財務体力に照らして、価格変動資産と確定した負債のバランスを見極めることが必要なのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)