経済産業省が国内のIT企業の法人税引き下げを検討しています。海外向け事業の収益に課す税負担を国際水準まで引き下げることで、企業が税金の安い国や地域に移転するのを防ぐ狙いだそうです。しかし、コロナ禍で国の財政状況が悪化しているなかでさらなる法人減税を推し進めることには、財務省などから慎重な意見も出ています。
IT企業はインターネットを通じてサービスを提供するため、店舗や工場などを設置しなくても経済活動を行うことができます。そのため、低税率の国に会社登記や管理機能を備えたオフィスを用意することで、各国内で生み出した利益を移転する課税回避策が有効でした。
こうした事情から各国の間では企業の本拠を呼び込むための低税率競争が激化してきた経緯があります。そこで経済協力開発機構(OECD)は、いたずらな法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけるための国際ルールの素案を昨年10月に公表し、検討を進めてきました。
OECDのルールでは、低税率国として知られるアイルランドの法人税率12.5%を最低税率の目安とする案が有力視されています。現状の日本で適用される最低税率を下回ることから、経産省は国際ルールの最低税率に見合った水準にまでIT企業の税負担を引き下げることで海外移転を防ぐ狙いです。
しかし、コロナ禍で国の財政が悪化するなか、財務省は税率の引き下げには慎重姿勢を見せています。また、これまで段階的に引き下げられてきた法人税の減収分が消費税によって賄われているとの批判もあります。そうしたなかでのIT企業に限った法人減税策は「一部の業種を優遇し、減収分を国民全体で負担するのでは差別的だ」(都内の製造業者)などと批判の声も上がっています。
<情報提供:エヌピー通信社>