ケインズ流のマクロ的経済政策は戦後の高度成長期頃までは有効に機能していました。しかし、1980年代からバブル崩壊後の1990年代以降、マクロ的経済政策の有効性に疑念が生じてきています。こうした事態は当初は日本特有の現象かと思われていたのですが、意外と普遍的なものと認識されるようになり、「低成長、低インフレ、低金利」を特徴とする日本化は先進国共通の課題になりつつあります。日本は少子高齢化だけではなく、この分野でも世界のトップランナーとなっています。
第二次大戦後の経済では、マクロ的経済政策の効果は明確でした。たとえば、不景気になれば、財政資金を利用して公共工事を行います。公共工事を請け負った業者は、銀行から資金を借り入れて、より多くの資材を購入したり、人員を増やしたりして、事業を拡大しようとします。なぜなら、この先経済は拡大すると思っていますから、強気の投資ができるわけです。給与が増えた従業員もこの先の給与増加を予想し、消費の拡大に躊躇しません。その結果、支出した財政資金額をはるかに超える経済成長が実現しました。この時代は、財政支出拡大が経済全体に及ぼす波及効果(経済学的には「乗数効果」といいます)は大きかったのです。
金融政策の有効性も明確でした。不況になり日銀が金利を引き下げると、銀行の貸出はすぐ増加し、企業は運転資金や設備資金を手に入れやすくなり、経済の活性化に貢献しました。
逆に、経済が過熱し、高インフレが懸念されるようになれば、財政と金融を引き締めることにより、経済は落ち着きを取り戻すことができました。
このように、政策当局は財政・金融政策を自在に操り、国の経済成長をある程度コントロールすることができたのです。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)