ところが、高度成長から低成長に移行するにつれ様相が異なってきます。バブル崩壊後の不況を受けて、経済を活性化させるべく、財政、金融政策を継続的に発動しましたが、経済は目立ったように成長しません。金融政策では金利を引き下げましたが、銀行貸出しは一向に増えず、金利はゼロに到達してしまいました。また、公共事業を請け負う事業者はむやみに事業を拡大しようとはしません。手持ちの資材と人員でやりくりしながら、請け負った事業をこなそうとします。その結果、給与も増えませんから、個人消費も盛り上がりません。
経済政策が以前ほど効かなくなった要因として次の2点を指摘できます。一つは、経営者マインドの冷え込みです。少子高齢化で人口減少が現実化する中で、経営者は日本経済の将来展望に楽観的になれませんから、公共投資があるからといって、安易に事業拡大には踏み切れません。
次に、カネ余りも大きな要因です。昔は、成長のボトルネックはカネでした。マクロ経済政策は結局のところ、マネーを供給して需要を刺激する政策ですから、カネ余りの状況で、マクロ経済政策をいくら発動しても、効果を上げないのは当然です。
財政と金融の拡大が前向きには効かなくなっても、財政破綻やハイパーインフレ等の将来的な経済不安の温床にはなりますから、野放図な拡大は慎まなければなりません。
経済全体に与える影響は減少しても、コロナ禍で本当に困っている人に対して財政的支援が必要になるように、個別経済主体に対しての経済政策は不可欠です。今後は漠然としたマクロ的な経済効果を期待するのではなく、困窮している個人への支援、真に必要なインフラ投資、成長が期待できる産業の育成といった、目的を限定した、効果がはっきり分かるミクロ的視点からの経済政策が重要だと思います。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)