今年末に向け話し合いが本格化する2019年度税政改正で議論になりそうなのが、ひとり親世帯の税負担を軽くする「寡婦控除」です。現状、離婚や死別によるひとり親が対象ですが、未婚のひとり親にも適用を広げるかが議論されます。同じひとり親でも、婚姻歴の有無だけで負担に差が出るのは不公平との声があるためです。
寡婦控除の始まりは1951年。戦争で夫を失った妻を支えるのが当初の目的でした。現状、ひとり親世帯を対象に所得税は年収から最大35万円、住民税は最大30万円を差し引いてから課税しています。ただ、離婚や死別でひとり親になっていることが条件で、未婚のままのひとり親は適用外です。
しかし、厚生労働省の2016年度調査では、母子家庭で「未婚」が占める割合は8.7%で推計約10万7千世帯に上ります。最多の離婚(8割)に次いで多く、「死別」(8%)をわずかとはいえ上回っています。一方で「未婚」世帯の母親の平均年収は177万円と母子家庭全体の200万円を下回っており、全体でみれば経済的に厳しい状況に置かれています。
政府・与党は18年度税制改正大綱で、寡婦控除について「19年度改正で(見直しを)検討し、結論を得る」と明記し、議論になるのは確実です。ただし自民党内では「婚姻に基づく結婚の形が壊れないか」、「内縁の夫がいるなど経済的に困窮していない場合も優遇されないか」などとの慎重論も根強くあります。財務省内でも、「昔から税制としては歪んでいると指摘されてきた」としつつ、対象世帯の所得がそもそも少ないことから「税よりも補助金などで対応する方が効果的では」との指摘する声もあります。
「子どもの貧困」が社会問題として意識される中、政府・与党が出す答えに注目が集まっています。
<情報提供:エヌピー通信社>