東京税理士会(西村新会長)はこのほど開催した理事会で2020年度税制改正に向けた意見書を取りまとめました。19年度改正に盛り込まれた相続の配偶者居住権について「租税回避に使われる可能性がある」と指摘するほか、今年10月にスタートする複数税率制度と、それに伴い導入される適格請求書(インボイス)制度に改めて反対の立場を表明しています。
今年度からの新規要望としては、19年度改正で盛り込まれた相続の「配偶者居住権」について制度の整備を求めました。配偶者居住権は、遺産分割の際に配偶者が家に住み続ける権利だけを家の所有権から切り離すもので、居住権を持つ配偶者が亡くなった時に、家の所有権の方を持つ子などに何らかの経済的利益が発生するかなどはまだ定まっていない部分があります。この点について東京会は、「現行の相続税法の枠組みでは、配偶者居住権が配偶者の死亡により消滅した場合、敷地等所有者に対する相続税課税は発生しないと考えられる」との見解を示した上で、「租税回避を目的とした居住権の設定が行われる可能性がある」と指摘。居住権をみなし相続の対象として財産評価すべきとしました。
また重要な改正要望項目として、今年10月に導入予定の「軽減税率」に反対。その理由として、減収分の税源を確保することが困難であること、適用対象の判断が複雑であること、事業者の事務負担が増大することに加え、「低所得者対策が目的であるにもかかわらず効果が限定的で、高所得者層により負担軽減が及ぶ」と制度導入の趣旨にも言及しました。
複数税率を正確に経理処理する目的で導入されるインボイス制度についても反対を表明しています。同方式ではインボイスを発行できない免税事業者との取引では税額控除が受けられないため、免税事業者が取引から排除される恐れが指摘されています。東京会はこの点に加え、税額控除の可否判断における事務負担の増大も反対する理由に挙げた上で、「仮に軽減税率が導入された場合においても、現行の請求書等保存方式によって十分対応できる」と指摘しました。
<情報提供:エヌピー通信社>