お知らせ/トピックスTOPICS

コラム 2025月09月30日

《コラム》中小企業白書を読み解く 持続可能な給与戦略

◆全国的な賃上げ機運の拡大
 近年、日本全体で賃上げ機運が高まりを見せています。2024年度には連合による春闘で平均5.1%という過去30年で最大の賃上げ率が示され、厚生労働省の調査でも中小企業の賃上げ実施割合が前年を上回りました。
 政府も物価高対策や人材確保を背景に最低賃金の引上げを強く後押ししており、2023年度には全国加重平均1,004円と初の1,000円超えを記録しました。これにより中小企業も否応なしに賃上げ対応を迫られる状況に置かれています。

◆中小企業における影響と傾向
 中小企業の賃上げ状況を詳しく見ると、一定の賃上げ実施率があるものの、その水準や継続性には業種・地域によって格差が見られます。
 特に小規模事業者では、利益率の低さや価格転嫁の困難さから、賃上げが経営圧迫要因となっている実態も明らかです。また、業績と関係なく人材流出防止や物価上昇への対応として「やむを得ず賃上げ」を行う企業も増加傾向にあり、持続可能な賃金制度の設計が急務です。

◆人件費上昇と労働分配率
 賃上げが進む中で、中小企業の労働分配率にも注目が集まっています。売上の伸びに対して人件費の比率が高まれば、企業体力を削ぐ要因になりかねません。一方で、優秀な人材の確保・定着を図るためには、単なる初任給アップではなく、処遇全体の見直しが必要です。具体的には、職務評価制度やスキルに応じた給与体系を導入し、従業員の納得感と企業の支払い能力を両立させる工夫が求められます。

◆生産性向上と制度活用が鍵
 賃上げを持続可能なものとするためには、生産性の向上が不可欠です。たとえば業務改善助成金を活用し、作業時間の短縮や労働環境の改善を進めることで、自然な形での賃上げが可能となります。また、給与制度の見直しと併せて、業績連動型手当の導入や非金銭的インセンティブの提供も有効です。経営者は目先の賃上げ圧力に振り回されるのではなく、中長期の人材戦略として賃金設計に取り組むことが重要です。

コラム 2025月09月23日

《コラム》-相続税の債務控除-『確実な債務』

 相続税の申告では被相続人の債務は相続財産から控除されます。この場合、控除される債務は「確実な債務」に限るとされています。被相続人の借入金は控除される債務の代表例ですが、その債務が相続の後に債務免除の対象となっていた場合、債務控除できるのでしょうか。

◆確実な債務の要件
 債務控除を受けるためには、債務が存在していること、及び債権者より債務弁済の履行が義務づけられていることが要件とされており、この要件を満たす債務を「確実な債務」と呼んでいます。

◆債務免除は担税力を減殺しない
 相続税は財産を取得した相続人に担税力を認めて課税されます。また、被相続人の借入金は相続財産から弁済して担税力が減殺されるので遺産総額から債務額を控除することになります。しかし、その債務が免除されることが確実とされる場合、担税力は減殺されないので債務控除は認められないことになります。

◆債務免除に停止条件がある場合
 被相続人の借入金のうち一定金額を期日までに弁済すれば、残額は弁済を免除する停止条件が借入契約に付されていた場合、その成就がほぼ確実であると見込まれるときは債務控除を認めない判例があります。
 しかし、被相続人の死亡時に債務免除に必要な弁済が未達であれば、相続人に弁済の履行義務はあるので、残債務は「確実な債務」と言えるのではないでしょうか。

◆債務免除は確実な債務でないとされた裁判
 実際の裁判事例です。相続人は被相続人の16億円の借入債務を引き継ぎ、銀行との和解による債務免除に必要な金額を弁済して残額約9億円の免除を受けました。そして相続税の申告では相続開始時に債務免除を受けることは確実であったとして約9億円の残債務について債務控除せず、増加した純資産額に対する相続税を負担しました。ところが債務免除益にも所得税が課税されて二重課税となったため、相続人は所得税の非課税を求めて訴訟を起こしました。
 一審、二審では相続人の資産状況から債務免除に必要な分割金は優に支払うことができ、残債務9億円は「確実な債務」でなかったとされました。しかし、相続人が仮に相続時に停止条件が成就していなかったことを理由に債務免除部分の債務を「確実な債務」として申告していた場合、裁判は同じ展開になったのか疑問が残ります。

税務トピックス 2025月09月23日

暗号資産関連団体が税制改正要望

 日本暗号資産ビジネス協会と日本暗号資産等取引業協会はこのほど、暗号資産に関する「2026年度税制改正要望書」を取りまとめ、政府に提出しました。日本ブロックチェーン協会が先に提出していた改正要望と同様に、申告分離課税の適用や相続時の評価方法の整備などを求めています。

 「要望骨子」としては、①申告分離課税(所得税)②寄附に係る税制の明確化と合理化(同)③評価・取得費に関する整備(資産税)④暗号資産同士の交換への課税タイミングの見直し⑤税制区分の見直し(所得税)――の5点を列挙。所得税については、20%申告分離課税と3年間の損失繰越控除の適用を要望しました。そのうえで、分離課税の範囲は暗号資産の種類やウォレットの種類で区分しないこと、現物取引とデリバティブ取引の双方を対象とすることを付け加えました。

 相続で取得した暗号資産については、譲渡時の譲渡原価計算の際の「取得費加算の特例」の適用を求めました。特例の対象ではないために相続税と所得税を最高税率で負担するなど過大な税負担となるケースがあるとしています。また相続財産評価に関して、相続日の最終価格だけではなく、「相続日の属する月の過去3カ月の平均時価のうち最も低い額」を選択可能とするように要望しました。

 要望書では暗号資産の税制について、「諸外国と比較して厳しい税制が適用されていることや、流出事件等を契機とした規制強化によって、国内のWeb3.0産業が成長しておらず、インターネットにおいて取り戻せないほどの後塵を拝した過ちを再び犯そうとしつつある」「現行税制は、国民が暗号資産にアクセスしたり利用したりすることを躊躇させる内容となっており、我が国がWeb3.0の分野において起死回生を図るにあたって、税制が最大の障害となっていることに疑いはない。このような現状は、Web3.0の推進という政府の目標にとって致命的である」と強く批判し、暗号資産の利用促進や市場の活性化、関連産業の発展のために税制を見直すことを求めています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2025月09月16日

《コラム》中小企業白書を読み解く DXがもたらす変革

◆伸び悩む生産性の現状
 労働生産性については、大企業では増加傾向にある一方で、中規模企業や小規模事業者ではおおむね横ばいが続いており、約10年前と比較すると緩やかに減少しています。コロナ禍からの反動や需要回復による一時的な上昇を除けば、大きな改善は見られません。特に小規模事業者では、業種により生産性格差が顕著で、製造業や情報通信業に比べ、サービス業・小売業では依然として低水準が続いています。人手不足の恒常化が続く中で、少人数で成果を出す体制整備が急務です。

◆設備投資に見る差と課題
 2023年度の中小企業の設備投資額は増加傾向にありましたが、その内容には大きなばらつきがあります。大企業に比べて中小企業は老朽更新に偏り、収益向上や競争力強化を目的とした戦略的投資が限られています。また、資金繰りの問題や先行き不安から投資に踏み切れない企業も多く、結果として労働生産性の伸びを阻害しています。
 ここで重要なのが、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といった支援策を活用し、中長期の視点で投資計画を構築することです。

◆デジタル化の進捗と課題
 DXへの対応状況は、企業間で明確な差が開いています。大企業やIT関連業種では一定の進捗がある一方、中小企業では「そもそも何から始めて良いかわからない」という声も根強く、社内のIT人材不足や初期コストへの懸念が障壁となっています。
 しかしながら、受発注業務や会計処理のクラウド化、在庫管理の自動化といった小規模な取り組みでも、着実な効果を上げている事例が増えており、まずは「できるところから始める」ことが重要です。

◆今求められる経営の姿勢
 生産性向上やDXは、一朝一夕で実現できるものではありません。重要なのは、経営者自らが「変わる覚悟」を持ち、社員を巻き込みながら一歩ずつ進める姿勢です。補助金申請時の事業計画策定においても、自社の強み・弱みを見つめ直すことが第一歩となります。税理士や社労士など専門家の支援も活用しながら、単なる制度対応に終わらせず、企業体質そのものを変革する視点でDX・投資戦略を立てることが、未来の競争力に直結します。

税務トピックス 2025月09月16日

相続税の物納申請わずか50件

 国税庁はこのほど、2024年度の相続税の「物納」「延納」申請・処理状況を公表しました。申請件数は「物納」が50件、「延納」が1197件。20年前(05年度)の申請件数は物納が1733件、延納が5763件なので、当時と比べると物納はわずか2.88%、延納は20.77%に過ぎず、ともに大幅減となっています。

 前年度に未処理で繰り越されていた「物納」の件数は15件で、新規申請50件と併せて合計65件。このうち物納が許可された件数は31件、取下げ件数は2件、却下件数は3件で、処理件数の合計は36件でした。全体の47.69%が許可され、55.38%が処理されています。申請金額は89億円、未処理繰越金額は7億円で、合計96億円。このうち物納が許可された金額は45億円でした。

 「延納」の未処理繰越件数は273件で、新規申請1197件と併せて合計1470件。このうち延納が許可された件数は832件、取下げ件数は251件、却下件数は16件で、処理件数の合計は1099件でした。全体の56.59%が許可され、74.76%が処理されています。申請金額は573億円、未処理繰越金額は140億円で、合計713億円。このうち延納が許可された金額は347億円でした。

 20年前(05年度)からの処理状況をみると、「物納」「延納」とも申請件数・金額が大幅に減少。05年度に物納が許可された件数は2730件、金額は1464億円で、延納のそれは5626件、1479億円でした。当時の物納許可件数は24年度の約88倍、金額は約33倍。延納許可件数は約7倍、金額は約4倍でした。

<情報提供:エヌピー通信社>

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