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コラム 2021月06月22日
◆今までの雇用確保とは違う就業形態
4月から施行された70歳までの就業確保努力義務、長期的には人手不足の緩和のため高齢者に長く働いてもらいたい、年金の受給開始延長にもつなげたいという意図もあると思えますが、会社や個人はどのような対策を取れるのでしょうか?
◆高年齢者雇用安定法の改正点
今までは本人が希望すれば原則的に65歳までの雇用が確保される制度でしたが、今回の65歳以上、70歳未満の就業を可能にする制度では大きく違う点が2つあります。
一つは70歳までの就業確保措置は努力義務であるということです。65歳を超えて働いてもらうために、一定の裁量権が与えられ、後述の5種類の措置のうち複数を組み合わせたり、対象者を全員としなくとも選抜したりもできます。選抜基準は過半数代表者との協議が必要とされています。また、新制度では元の勤務先と無関係の会社が再雇用先になることもあります。
二つ目は65歳以上の対象者と労働契約は結ばず雇用以外の働き方をさせることも認められ、フリーランスや個人事業主として業務委託契約で就業させたり、又は会社が関係する社会貢献団体で働かせることもできます。
◆65歳以上の働き方のパターン
①70歳までの定年の引き上げ……定年を60歳や65歳から70歳にする。雇用は維持されるが退職金の問題などを決めなおす必要があり
②定年廃止……定年制度自体をやめる。体力が続く限り就労もあり
③70歳までの継続雇用制度……有期で反復雇用、他の会社で雇用、能力による処遇。一般的に賃金は下がる
④70歳までの継続的な業務委託……仕事内容、対価は会社と相談し決定、会社の指揮命令は受けない。労働基準法は適用されず労働法の保護はない
⑤70歳までの継続的な社会貢献活動……会社が実施または委託等する出資団体の活動に参加。勤務先は選べない
以上のように70歳までの雇用を確保する場合、会社の方針は何なのか、自分ではどのように働きたいのか、健康面等、会社の提案をよく考えて検討することが必要でしょう。
コラム 2021月06月22日
◆輸出品だから全部免税というわけではない
事業主が国内で商品の販売をしたり役務の提供をしたりすると、原則として消費税がかかります。しかし、これらが輸出取引に当たる場合には消費税が免除されます。消費税などの間接税は、消費される国で課税されるよう国境税調整により税を課さないことが国際慣行となっているためです。
輸出免税は事業者にもよく知られていて、輸出=消費税なしとの認識が多いと思われます。しかしながら、輸出免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることについて、その輸出取引等の区分に応じて一定の証明が必要です。
なお、最終的に輸出されるものであっても、①輸出する物品の製造のための下請加工や②輸出取引を行う事業者に対して行う国内での資産の譲渡等は輸出取引ではないので、輸出免税とはなりません。
また、輸出の取引条件によっては、買主が外国企業であっても国内譲渡とされ、輸出免税とならない場合(Ex-Works:EXW=工場渡しの場合)もあります。要注意です。
◆外国と直接取引だから全部免税でもない
非居住者に対して行われる役務の提供は、①国内資産の運送保管、②国内での宿泊や飲食、③その他国内において直接便益を享受するものを除き、輸出免税の対象になります。
役務提供などの場合には、その契約書などで一定の事項が記載されたものが、輸出取引等の証明として必要です。
役務提供を受ける者が日本国内に支店又は出張所等を有していれば、そこと取引があったものとして輸出免税から外れます。しかしながら、外国の本店等とのみの直接取引であれば免税となりますが、国内支店又は出張所等の業務と関連するものでないことが条件とされます。条件確認が複雑です。
◆消費税請求漏れを追加請求で回復できない
相手が外国の会社(=非居住者)だから消費税の課税はないと思い込んで消費税を付加しない取引を行い、後日税務調査などで消費税の課税漏れを指摘されたような場合には、その課税漏れ分は自社の負担となってしまいます。よっぽど販売側の力関係が強い場合でない限り、税金を追加でもらうことはできません。取引時に慎重に課税の有無の検討が必要です。注意しましょう。
コラム 2021月06月15日
◆異なる課税方式の選択が可
上場株式等の配当所得の課税方式には、①総合課税、②申告分離課税、③申告不要制度があります。この課税方式の選択における所得税と個人住民税での関係について、平成29年度の地方税法の改正で、解釈の確認と言える規定が設けられました。すなわち、上場株式等の配当所得や源泉徴収選択口座内の譲渡所得等について、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択できることが明確化されました。
◆所得税と住民税の様式の不整合
しかし、所得税の確定申告書の住民税に係る記載欄には、住民税での課税方式の選択欄がありません。従って、所得税と住民税で、異なる課税方式を選択する場合には、個人住民税納税通知書送達日(5月下旬頃)前に、所得税とは異なる課税方式選択の旨を伝える申告書等の提出が必要でした。
◆有利不利の目安
課税総所得金額が1000万円以下の場合(上場株式等の譲渡損失なし)であれば、所得税では総合課税、個人住民税では申告分離課税又は申告不要制度を選択するパターンが一般的には有利です。
ちなみに、後期高齢者保険料や国民健康保険料の負担も、個人住民税に係る申告による所得をその料額計算の基礎としていますので、課税方式の選択の効果はここにも及びます。
◆日税連の税制建議と今年の税制改正
なお、平成の終わり頃、この課税方式選択に係る住民税額や保険料額の長期に亘る決定誤りがあったと公表する自治体が続出していました。これを承けて、日本税理士会連合会は2019年7月22日提出の「税制改正建議書」の中で、「上場株式等の配当所得等に関し、個人住民税において所得税と異なる課税方式を選択する場合の申告手続を簡素化すること」を申し入れていました。
今年の税制改正大綱では、個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として、確定申告書の提出のみで申告手続が完結できるよう、確定申告書における個人住民税に係る附記事項を追加する、とされ、税理士会の要望が実現しています。
令和3年分からの所得税の確定申告書作成では、住民税欄の附記事項記載に要注意です。
税務トピックス 2021月06月15日
NPO法人などの市民組織に助成する地方自治体の事業への会社の寄付が、企業版ふるさと納税の税優遇の対象になることを福岡国税局が文書で示しました。NPO法人等への直接の寄付とみなされる「トンネル寄付」に該当して税優遇の対象にならない可能性があったことから、佐賀県がその適否について福岡局に確認を求めていたもので、県は今回の回答を踏まえて市民組織を助成するスキームを運用します。
トンネル寄付とは、形式的には国や地方自治体を通じて金銭が交付される仕組みでも、実質的には寄付する者が金銭を直接交付している状態と変わらない寄付のことを言います。佐賀県が今回照会したスキームで見ると、県が企業から寄付を集め、寄付金基金に積み立てた後、NPO法人やボランティア団体などの市民組織に寄付金を交付することが、県を経由していても実質的には「企業からNPO法人への直接の寄付」とみなされるおそれがありました。トンネル寄付に該当すると企業版ふるさと納税の対象にはならず、企業は通常の寄付税制しか適用できなくなります。
しかし佐賀県が照会した市民組織への助成事業はトンネル寄付に該当しないと国税当局は判断しました。交付対象者を県の審査委員会の審査を経て県が採択することや、決算では監査委員の審査や住民への公表が行われることなどから、寄付金の支出先を決定するのが寄付者である会社ではなく県であると判断されました。
<情報提供:エヌピー通信社>
税務トピックス 2021月06月8日
1500万円までの教育資金の一括贈与を非課税にする特例の要件が、4月1日から厳格化されました。2021年度税制改正法によるもので、今後は贈与後の使い残しに、相続税が課される可能性が高くなります。
教育資金贈与の非課税特例は、30歳未満の子や孫への一括贈与について、教育資金であれば受け取る側1人あたり1500万円まで贈与税を非課税とするもの。受け取った側が30歳(学校に在籍しているなどの要件を満たせば40歳)になった時点で使い残しがあれば、残額に贈与税が課されます。
そもそも財産を引き継ぐには大きく分けて相続と生前贈与の2種類があり、ケースバイケースではあるものの、概して贈与のほうが税負担がトータルで少なくなる傾向にあります。税負担だけを考えれば計画的に生前贈与を行ったほうが得ですが、本人が健在なうちは財産の引き継ぎを真剣に検討しないこともあり、健康に何らかの問題が生じてから贈与を実行する人も多いのが現状です。
そうした生前の〝駆け込み贈与〟によって税収が減ることに歯止めをかけるため、相続税法では原則として、「相続発生前3年以内の生前贈与については、相続財産として扱う」という規定が設けられています。この規定について教育資金の贈与特例ではこれまで、贈与の残額を一定の例外を除き「3年持ち戻し」の対象に含めるとしています。言い換えれば、贈与から3年が経っていれば相続税の課税を免れることが可能でした。
しかし4月以降の贈与については、この持ち戻しの対象が無期限に延長されます。何年前の贈与であっても、受贈者が23歳未満であるか在学中か教育訓練受講中であるときなどを除き、すべて相続財産に持ち戻すようになります。
さらに今回の見直しでは、孫・ひ孫への相続税の課税強化も行われました。相続税の原則として、法定相続人ではない孫・ひ孫への相続税は2割加算されるルールがあります。しかしこれまでは教育資金として一括贈与しておけば、たとえ3年持ち戻しの対象となって残額に相続税が課されても、2割加算ルールからは除外されるという優遇が設けられていました。これを4月以降の贈与については、原則通り2割加算の対象とするよう見直されています。
<情報提供:エヌピー通信社>
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