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コラム 2023月07月18日
◆インボイスが始まるけれど
2023年10月から、インボイス制度(適格請求書保存方式)がスタートします。インボイス番号の確認や取得状況についての問い合わせが来ている、との話をよく耳にするようになりました。
平成28年度 与党税制改正大綱 (参考資料②-2)では、国内823万の事業者のうち、513万者余(63%)が免税事業者で、うち435万が個人の免税事業者、77万が法人の免税事業者とされていました。すなわち、インボイス制度導入により、日本国内の63%もの事業者が影響を受けるのです。
ただし、免税事業者と言えど、消費税を請求する権利が消費税法上ありますし、また、仕入消費税分を転嫁しないで自己負担とする義務などありません。インボイス制度が消費税請求の権利、転嫁の権利を踏みにじるのだとすると、それは由々しきことです。
◆8割特例を用意して損の緩和と受容奨励
免税事業者のままでは、インボイスを発行できないので、免税事業者と取引する課税事業者は、消費税の仕入税額控除が適用されなくなり、損をすることになる、と言われています。
その損を緩和せんとするのが、8割特例です。インボイスのない免税事業者との取引額の消費税10%消費税について、8割にする、というものです。
消費税込みで110万円の取引とすると、仕入税額控除は10万円の8割80,000円となり、控除除外された20,000円は経費として損金算入され、法人税等の負担税率が30%だったとすると、6,000円の法人税額等の減少効果を生み、合わせて86,000円の税負担軽減となるので、免税事業者との取引で損をする額は、10万円-86,000=14,000円です。消費税率10%の中の14%部分です。税抜取引額の1.4%です。
◆2割特例では免税事業者が損を被る
免税事業者がインボイス発行事業者となった場合には、2割特例が用意されていて、負担する消費税額は、消費税額10万円の場合、その2割の2万円です。法人税負担まで考慮すると上記と同じく1.4%です。
免税事業者が2割特例を適用すると、その取引相手は仕入税額控除100%可能です。
どちらかに1.4%の税負担を負わせようとするインボイス制度ですが、そんなに大きな金額の負担ではないので、当面は、いずれの選択になろうと、取引への変化などはなさそうに思われます。
税務トピックス 2023月07月11日
固定資産税などを約20年間も過大に徴収されたとして、土地所有者が約1億円の返還を大阪市に求めた裁判で、大阪地裁は5月下旬、原告らの訴えを退ける判決を下しました。多くの自治体では過大徴収が発覚したときの返還時効を5年と定めていますが、固定資産税の過大徴収は長期間にわたることが珍しくないことから、5年超の賠償を求めて争う納税者は少なくありません。過去には国家賠償法の時効である20年を超えて賠償を命じた判決もあり、司法判断も一様ではないようです。
訴状によれば、今回の裁判で争われた大阪市のケースでは、ひとつの土地に異なる容積率が混在する場合、土地の評価額を最大で34%減額補正できるとする特例が設けられていました。しかし原告らの土地では少なくとも20年にわたり特例が適用されず、過大に固定資産税や都市計画税を徴収されていました。所有者らが2018年以降に大阪市に申し出たところ、市は地方税法が定める還付の時効に従って5年分を返還しましたが、土地所有者らが「市が調査を怠っていたことが原因である」として、国家賠償法の時効である20年分の返還を求めたものです。
大阪地裁は判決で、「市の規定は、容積率が混在する土地について価格の差が著しい場合にのみ適用されるもので、本件はこの場合に該当することが明らかとは言えない」とした上で、「大阪市に明確な注意義務違反があったとは言えない」と述べ、原告らの訴えを棄却しました。
過大に納めた税金の還付に関する時効規定では、原則的に「5年」と定められています。ただし多くの自治体では「過徴収金返還要綱」などと呼ばれるルールを定め、5年を超える過徴収についても返還する方針を採用しています。要綱に規定する時効は自治体にもよりますが、7年、10年、20年などまちまちで、近年多発している固定資産税の過徴収事例では、この要綱に従って返還期間を決めるケースが少なくありません。
<情報提供:エヌピー通信社>
コラム 2023月07月11日
被相続人が死亡するまでの間に受けるべきであった年金で支給されていなかったもの(未支給年金といいます)には相続税が課されません。相続税法の非課税財産と規定されているわけでもないのに、課税されないのは何故でしょうか。
国税庁のサイトには、遺族の未支給年金請求権に相続税を課さない理由を次のように解説しています。
①最高裁が未支給年金の相続性を否定
国民年金や厚生年金等の公的年金では、年金受給者が死亡した場合、被相続人と生計を一にしていた3親等内の親族の中から、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の者の順に未支給年金の受取人を定めています。
未支給年金の請求について、最高裁は、その相続性を否定し、民法の相続とは別に遺族の生活保障を目的とした立場から遺族に未支給年金の支給の請求を認め、その請求権は相続の対象とはならないと判示したため、国税庁も本来の相続財産として相続税の課税対象とならないと解しています。
②定期金を受給する権利に該当しない
個人年金や退職年金の受給権については、継続受取人に対し、みなし相続財産として相続税が課されます。年金で受給するか一時金で受給するかは、年金受取人の選択で決めることができ、課税上は年金も一時金も同様に、みなし相続財産となります。
これに対し、国民年金や厚生年金等の未支給年金は、法律で受給権者と受給する順位が定められ、一方的に付与されるものであり、最初から一時金のみを支給するため、みなし相続財産に該当しません。
なお、未支給年金の受取人には一時所得として所得税が課されます。
◆遺族への年金には相続税を課さない
国民年金、厚生年金等の公的年金で支給される遺族年金には、相続税も所得税も課さず、未支給年金にも相続税を課さないことが、それぞれの法律で規定されています。
相続税では、通達で遺族年金は課税しない旨が示され、未支給年金は質疑応答事例により、課税しない旨が示されています。
個人年金や退職年金は、公的年金に上乗せして老後の生活を補てんするので遺産分割の対象となり、相続税が課されるのに対し、遺族年金や未支給年金は、遺族の生活保障のために支給されるので遺産分割の対象とならず、相続税を課さないと考えると理解しやすいかもしれません。
コラム 2023月07月4日
◆インボイス制度負担軽減措置の2割特例
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者は、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることができます。いわゆる2割特例です。
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者が対象です。基準期間における課税売上高が1千万円を超える事業者等、インボイス発行事業者登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合などは対象外です。
この特例の適用に当たっては、事前の届出は必要なく、消費税の申告時に消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記すれば適用を受けることができます。
また、2割特例の継続適用といった縛りはなく、課税期間ごとに2割特例を適用して申告するか否か判断することができます。
2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。
◆卸売業以外は一般課税で2割特例が柔軟
2割特例は、一般課税と簡易課税のいずれの選択でも、適用することが可能です。
簡易課税計算で、卸売業はみなし仕入率が90%ですが、それ以外の事業は80%以下です。そのため、卸売業以外の事業の場合、特例が適用できる期間は2割特例を使った方が納税額は同じか少なくなります。
簡易課税での計算は、一般課税での計算とは違い、売上げの消費税よりも仕入れの消費税の方が多くなっても、マイナス分が還付される仕組みとはなっていません。マイナスに備え、一般課税で計算できる柔軟性を残すため、簡易課税の選択を先延ばしした方が良いかもしれません。
◆特例を適用した課税期間後の簡易課税選択
2割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、消費税簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。
免税事業者から課税事業者になることで自社に消費税がどう影響してくるのかのシミュレーションをしっかり行い、こうした緩和措置をうまく活用してください。
税務トピックス 2023月07月4日
相続した不要な土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」で、2週間で200件以上の申請があったことがわかりました。相談件数も6千件近くに上り、管理が困難な土地を手放したいニーズがあることが浮き彫りとなっています。
5月下旬に北陸地方整備局が開催した北陸地区土地政策推進連携協議会の総会で、富山地方法務局が、制度の利用状況を報告しました。それによれば制度がスタートしてからの2週間で、全国で200件以上の申請があったそうです。最も多かったのが「農地」で、次いで「宅地」、「山林」と続きました。
制度開始に先立つ2月には、自身の土地が引き渡せるケースかを相談できる窓口が法務局に置かれています。協議会では、この事前相談が5月までに全国で約5800件利用されていることも報告されました。富山地方法務局は「土地を手放したいというニーズはそれなりにあり、国民の関心は高い」としています。
同制度を利用して土地を引き取ってもらうには一定の要件が設けられています。申請をするに当たっては、建物がないか、担保権や使用収益権が設定されていないかなどがチェックされ、また申請を受理されても、一定以上の勾配・高さの崖がないか、管理・処分を阻害する有体物が地上にないかなど、国が管理に要するコストが過大とならないかがチェックされます。
それらの条件をクリアして審査を通過しても、土地を国に引き渡す際には10年分の管理費に当たる負担金を納めなければなりません。金額は原則20万円ですが、市街地や農用地区にある宅地、田畑、森林などは金額が上がり、面積によっては100万円を超える負担金が発生することもあります。申請に当たっての諸々の事務負担やコストを検討した上で、制度を利用するかを判断したいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>
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