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コラム 2023月05月23日

《コラム》年金払積立傷害保険の課税

 事故により重度の後遺障害が生じたとき、あるいは死亡したときに保障され、満期になると年金で保険金を受け取れるのが「年金払積立傷害保険」です。

◆年金受取人の雑所得に課税
 保険料負担者と年金受取人が同一の場合、年金は全額が雑所得として課税されます。
 雑所得金額=総収入金額-必要経費
 総収入金額=その年の年金支払額
 必要経費=その年の年金支払額×払込保険料総額/年金支払総額
 なお、年金受給者が受給期間中に死亡した場合は、残存期間の年金現価を一時金として法定相続人が受給することとなり、相続税が課税されます。

◆年金受取人への贈与課税に注意!
 年金受取人を保険料負担者以外の配偶者や子供に設定すると年金受給開始時に年金現価に贈与税が課税されます。保険料の負担者と年金受給者が異なるときは、財産が当事者間で移転しているので課税関係が生じます。契約途中での契約者や受取人の名義変更は、課税関係に注意しましょう。

◆所得税との二重課税は回避される
 年金受取開始時に贈与税が課税されるので、その後は運用益部分を除き、所得税は課税されません。これは、生命保険の年金に対する課税を巡る訴訟において最高裁が、相続時に年金受給権に相続税が課税された後、年金受取時に再び所得税で課税することは運用益部分を除き、二重課税になると判示したことを踏まえて立法化されたもので年金払積立傷害保険にも適用されます。
 年金の運用益部分に対する雑所得の計算には、所得税申告書の付表「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書」を使用します。

◆相続等に基づく年金の雑所得の計算
 相続・遺贈・贈与(相続等)のあった年は、年金の現価部分に相続税または贈与税が課税され、翌年以後は年金の運用益相当部分が雑所得として課税されます。
 雑所得金額は、運用益部分の収入金額から必要経費を控除して算定します。運用益部分の収入金額は、年金総額から年金受給権の相続税評価額を控除した残額を年金を受給する各年に配分して求めます。所得税は、初年度は全額非課税、2年目以降は課税部分が毎年、階段状に増加していきます。必要経費は、その年の年金支払額に、払込保険料総額の年金支払総額に占める割合を乗じ、各年に配分して算出します。

コラム 2023月05月23日

《コラム》創業時の個人保証を不要とする新しい信用保証制度開始

◆スタートアップ創出促進保証制度
 2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえ、創業時の経営者保証を不要とする新しい信用保証制度として、「スタートアップ創出促進保証制度」が2023年3月15日より開始されました。
 これまでも原則無担保無保証での融資は日本政策金融公庫の創業融資等がありましたが、起業を考えられている方の約8割が借金や個人保証を抱えることを懸念され、起業に踏み切れない阻害要因になっておりましたので、起業・創業の促進につながるよう新しい制度が始まりました。

◆最長3年以内の元本返済の据置期間も
 本制度の保証対象者は創業を予定(これから2か月以内に法人を設立予定)の個人もしくは創業5年未満の法人になります。保証限度額は3,500万円で、運転資金および設備資金の両方に使えます。保証期間は10年以内となりますが、1年(条件を満たせば最長で3年)以内の元本返済の据置期間がありますので、資金が特に必要な創業期にある程度資金の心配をせずに事業に集中できます。
 保証料率については、無担保無保証であるため、各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率となっています。

◆本制度の留意点
 本制度を受けるためには、創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要となります。保証申込の受付時点で税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金を有している必要があるので注意しましょう。
 また、本制度の融資後には原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受ける必要があります。

税務トピックス 2023月05月16日

カジノの勝ち分は一時所得

 カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)の開設に向け、大阪府・市が提出した計画が国に認定されました。カジノ構想は、新型コロナの流行により実質上ストップしていましたが、感染状況がある程度落ち着いたことで再始動したかたちです。

 ギャンブルで勝って得たお金は、原則として税法上の「一時所得」として所得税が課されます。一時所得は10種類ある所得のうちでも、労務や役務の対価として生じない、つまり運などによる偶発的な収入を指すもの。現在進んでいるカジノ構想でも〝勝ち分〟は一時所得として扱われる方針です。

 ただし競馬などであれば原則として勝ち分の馬券代しか経費として差し引けないのに対し、カジノでは入場時と退場時のチップ枚数をトータルで差し引いて、その差のみを所得として扱うことになる見通しです。特別な扱いをする理由としては、勝敗の全てを把握するのが困難ということがあるようです。

 競馬や競輪といったギャンブルの勝ち分が所得として課税されるといっても、実際には勝ち分を正直に確定申告する人はほとんどいないため、よほど高額な当選金でないかぎり当局が捕捉し切れていない現状があります。それだけに今回導入するカジノでは、マイナンバーなどを徹底的に活用して所得を漏れなく捕捉する構えです。

<情報提供:エヌピー通信社>

税務トピックス 2023月05月16日

役員報酬裁判 地裁が棄却

 役員報酬が同業他社よりも高額になっているとの理由で報酬の経費計上を認めなかった国税当局に対し、京都市の食品会社が処分の取り消しを求めて争っている裁判で、東京地裁は原告の請求を棄却し、国税当局の処分は妥当とする判決を下しました。原告側は結果を「不当な判決」と判断し、控訴するとしています。

 裁判では、京都市の食品会社が役員2人に対し支払った4年間の役員報酬約21億5100万円のうち、約18億4千万円が「不相当に高額」になっているとして国税当局が損金算入を認めなかった処分の妥当性が問われました。同社への追徴課税は約3億8500万円に上ります。同社は「海外の販路開拓や利益率の改善といった役員の働きに見合った適正な報酬だった」と主張していました。

 裁判で焦点となったのは、同業者と役員報酬額を比較することの妥当性。同社の社長は最終弁論で「当社は倉庫や在庫管理システムを持たず製造を外注する『加工食品のファブレス事業者』。しかし国税当局のなかにこのような業種の分類がなく、『卸売業』に分類されてしまっている」と主張していました。卸売業は薄利多売で利益率は低くなりがちな一方、ファブレス事業者は自社設備を持たないことから利益率が高い傾向にあります。

 この点につき、裁判長は判決で、「反復継続的に仕入れ・販売することによって売上総利益が生じていることからすると、原告の主たる事業は(中略)『卸売業』に該当する」と認定。原告側は、「卸売業の機能である調達機能、販売機能、物流・保管機能、金融・危機負担機能、情報提供・サポート機能のいずれも有していない」と主張していましたが、これに対しては「金融・危機負担機能については不明」としつつ、他は「機能を有していた」と退けています。

 また問題となった役員が関与していたベトナムでの海外事業については、収益は生じていないことを重視しました。役員の赴任が具体化せず、ベトナム新規事業再開のめどが立っていない状況において高額な給与の支給を続けるということは「企業の意思決定としておよそ合理的なものとはいい難い」と断じています。

<情報提供:エヌピー通信社>

税務トピックス 2023月05月9日

遺産21億円超が宙ぶらりん

 亡くなった人の財産のうち、誰にも相続されずに自治体が保管している遺留金が21億円を超えていることが分かりました。自治体が相続人を探す調査にかかる費用などが膨らんでいるとして、総務省が厚生労働省と法務省に状況改善を勧告しました。

 身元不明の死者や、連絡がとれる親族がいない人が死亡して残した現金や預貯金は、「遺留金」と呼ばれます。「行旅病人および行旅死亡人取扱法」により、そうした遺留金は自治体が保管、清算することが定められていて、最終的に行き先が見つからなければ国庫に納められるものの、それまでに行われる相続人を探す調査などは自治体が行うこととなります。単身世帯が増えて家族のつながりが希薄になるなか、独りで亡くなる人の数は今後も増加が見込まれ、厚生労働省と法務省は2021年、遺留金の処理方法を示した自治体向け手引を作成したばかりです。

 総務省は今回、21年12月~22年3月にかけて全自治体を対象に調査を実施。身寄りのない人の死亡は18年4月~21年10月までの3年半で約10万6千件あり、うち46%で現金や預貯金が「遺留金」となりました。自治体の保管額は計約21億5千万円でした。

 今回の調査では、死亡届が親族から提出されず相続人の調査に必要な戸籍謄本の交付を請求できないケースや、亡くなった人の葬祭費に充てるために自治体が本人の口座から預金を引き出そうとしても金融機関が応じないケースも確認されました。身寄りのない人の葬祭は自治体が実施し、費用は遺留金で賄うのが原則ですが、預貯金を引き出そうとした際に金融機関から「相続人以外は引き出せない」などと断られるケースが多数あったそうです。実際は関連法で引き出しが認められているため、制度の周知が進んでいないとみられます。

 総務省は、遺留金の取り扱いについて指針を出している厚生労働省と法務省に対し、戸籍謄本の交付の請求や預金の引き出しについては必要な場合には自治体が対応できる法的根拠があることを指針で示し、関係機関に周知するなど改善を行うよう勧告しました。

<情報提供:エヌピー通信社>

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