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コラム 2023月01月24日

《コラム》役員報酬総額の上限を超えていませんか?

◆役員報酬(=役員給与)を決める機関
 会社法で、役員報酬は、定款にその事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めるとされています。役員報酬の改定をするたびに定款の変更をすることは手間が掛かるので、株主総会の決議で決めている会社が多いのではないでしょうか。
 また、株主に同族でない人がいる場合は、できるだけ各個人の役員報酬額は開示したくないとして、その決定を取締役会に委任しているケースが多いものと思われます。

◆過大な役員給与の損金不算入
 法人税法で、役員給与のうち、不相当に高額な部分の金額は、過大な役員給与として損金の額に算入されないこととなっています。過大部分の額の判定基準等として、法人税法施行令で、実質基準と形式基準が示されています。
 実質基準とは、役員の職務内容や法人の収益、使用人に対する給与の支給状況、類似法人の役員給与の支給状況を総合勘案して算定した額を基準とするものです。
 形式基準とは、定款の規定又は株主総会等の決議によって定められている給与として支給することができる限度額を基準とするものです。
 それぞれの基準で適正と認められる額を超えるものが過大部分の額とされ、いずれか多い金額が過大な役員給与として損金不算入となります。

◆株主総会で決めた総額を超えないよう注意
 実質基準の金額は算定が難しいので過大部分があるかどうかすぐにはわかりません。(過大な部分がないとするためには、役員給与額を決めた根拠等を書面で準備しておくことが必要です。)
 一方、形式基準は、過去に決めた金額があるので、それを超えている場合は過大とみなされます。
 株主総会で決めた総額の範囲内であれば、次の事業年度開始から3か月以内に取締役会で新役員給与を決めることができるので、毎年、取締役会でのみ報酬額の改定をしている会社が多いのではないでしょうか。
 取締役会で決めた個々の役員給与の合計額が、いつの間にか、株主総会で決めた総額(=役員報酬額の上限額)を超えていると形式基準で即刻アウトとなります。改定時には、常に、以前株主総会で設定した上限額の確認を怠らないことが肝要です。

コラム 2023月01月17日

《コラム》借り上げ社宅の税金-個人は節税で、会社は変わらない

◆借り上げ社宅制度で個人の税金負担は減る
 会社が住宅の賃貸物件を借り上げして従業員等に貸与する「借り上げ社宅」制度を導入すると、通常、その従業員等の税金(所得税・住民税)の負担が減ります。それまで給与としていた額の一部を「借り上げ社宅」費用に充て、その分給与額面を減らす仕組みとなるためです。対象者は給与を減らされても、それまで支払っていた家賃費用を支払わなくてよくなるので困りません。
例)家賃15万円の社宅で自己負担5万円
従前:給与45万円家賃15万円で残30万円
導入後:給与35万円家賃5万円で残30万円
※給与額面10万円に対する税金負担が減るので手取りは多くなります。
 一方、会社側の経費負担は変わりません。
従前:給与45万円の支払い
導入後:給与35万円+家賃15万円-本人負担家賃5万円で45万円の支払い
※厳密には、会社負担の社会保険料等が、給与額面10万円にかかる分、減ります。

◆借り上げ社宅制度導入時に気を付けること
 社宅制度には社宅規程の整備が必要です。特定の人だけが経済的利益を享受しないような規程ぶりとしなければなりません。
 また、借り上げ社宅は、礼金や更新料、退去時の原状回復費用なども借主である会社負担となります。入居者負担額を決める際は、この諸費用負担の考慮も欠かせません。

◆社宅の適正家賃の計算方法(従業員の場合)
 借り上げ社宅の場合、家賃全額が会社負担では、従業員等に対しての給与とみなされ、課税の対象となります。課税されないためには、一定額の家賃(「賃貸料相当額」)を従業員等から徴収する必要があります。賃貸料相当額は(1)から(3)の合計です。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準)×0.22パーセント
 従来、受取家賃は、支払家賃の50%ならよいとか、従業員は10~20%の家賃とし、最終手段は、税務調査で正しい家賃を算出してもらえばよいなどもいわれてきました。
 以前は固定資産税の課税標準額は大家さんに聞くしかありませんでしたが、いまは賃借人も請求できますので、適正家賃の計算ができます。適正家賃の計算をし、給与課税されない金額を決めましょう。

コラム 2023月01月17日

《コラム》労働生産性と働き方改革

◆労働生産性と働き方改革の関係
 「生産性=成果÷投入量」ですので「労働生産性=付加価値÷総労働時間」となります。
 国が推し進める「働き方改革」の目的は一貫してこの「労働生産性の向上」です。労働生産性の算式を見てわかる通り労働生産性を上げるには「付加価値を上げる」か「総労働時間を下げる(短くする)」しかありません。既に実施されている各種の働き方改革の施策、例えば「罰則付き労働時間上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」などは後者の「総労働時間を下げる(短くする)」ための施策で、「働き方改革フェーズⅠ」といわれるものです。これに対して「働き方改革フェーズⅡ」といわれる施策も進められようとしています。つまり、これからの働き方改革の施策は「付加価値を上げるため」のものということができます。

◆働き方改革フェーズⅡ
 働き方改革フェーズⅡについての具体的な施策はまだ施行されていませんが、内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針(以下「基本方針」)2021及び2022」でその方向性が示されています。まず、2020年の世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響後に作成された基本方針2021では、「感染症の影響からテレワークの拡大などの変化を後戻りさせず、働き方改革を加速させる」とし、そのうえで「労働時間の削減等を行ってきた働き方改革のフェーズⅠに続き、メンバーシップ型からジョブ型の雇用形態への転換を図り、従業員のやりがいを高めていくことを目指すフェーズⅡの働き方改革を推進する」と謳っています。ここで注目すべきはフェーズⅡの目的を「従業員のやりがいを高めること(エンゲージメントを高めること)」とし、そのための手段として「雇用形態をメンバーシップ型からジョブ型へ転換すること」としていることでしょう。基本方針2021を受けて作成された基本方針2022では、従業員のやりがい(エンゲージメント)を高めるための多様な働き方の選択やそのための環境整備のための施策が謳われています。いくつか例を挙げると「副業・兼業」「リスキリング」「労働条件の明確化」などは早期の法制化や財政支援が見込まれています。

コラム 2023月01月10日

《コラム》借り上げ社宅の社会保険料-現物給与価額は厚労省告示

◆社宅使用料は所得税法と社会保険法で違う
 社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、標準報酬月額を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、残業手当等諸手当、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。社宅などの住宅の貸与も現物支給に含まれます。
 所得税法では、その物件建物の固定資産税の課税標準額をもとに所定の計算をし、賃貸料相当額の計算をし、受取家賃との差額で経済的利益発生(=給与課税)の有無を認識します。
 社会保険では、現物で支給されるものが、食事や住宅である場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨換算します。

◆社会保険料算定のための現物給与計算
 住宅で支払われる現物支給等である場合、1人1か月当たりの住宅の利益の額は(畳一畳につき)いくらと、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」で都道府県ごとに決められています。
 ここで計算される住宅面積は、居住用の室で計算します。住宅面積が㎡で表示されている場合、1畳あたり1.65㎡に換算して計算します。もし、勤務地がA県、社宅がB県にある場合、現物給与価額は勤務地であるA県による価額で計算します。
(住宅貸与の通貨への換算額)=(住宅面積)÷ 1.65㎡ ×(都道府県ごとの価額)
となります。都道府県ごとの価額は、日本年金機構のホームページで確認できます。
 被保険者(社員)から住宅費用を徴収している場合は、換算額から徴収額を差し引いた額が報酬額となります。換算額と同額以上の住宅費用を徴収している場合は、住宅貸与による報酬の額はゼロとして取り扱われます。

◆所得税法と社会保険法でどちらが優先?
 それぞれの規定で経済的利益の課税や現物給与発生の有無が決まってくるので、借り上げ社宅の場合、両方の計算をして、入居者から徴収する金額を決める必要があります。
 地域によっては、社会保険の現物給与額の方が所得税計算よりも高く算定されることもあるようです。往々にして所得税の経済的利益の有無の確認のみで安心しがちです。社会保険料の計算にも影響を与えないかどうか、社会保険労務士さんにも相談して手続きを進めることがおすすめです。

税務トピックス 2023月01月10日

タワマン節税が法規制へ

 タワマン高層階の実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」について、政府・与党は相続税評価額の算定ルールを改める方針を固めました。24年度以降の改正を目指しています。タワマン節税を巡っては2022年4月、実勢価格14億円のマンションを0円で申告した納税者に対して追徴課税した国税当局の処分の妥当性が争われ、国税側の主張を認める最高裁判決が下されています。

 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。例えば同じマンションのなかでも、1階住戸の実勢価格が5千万円、同じ広さの30階の住戸が1億円で、相続税評価額はいずれも2千万円とすると、実勢価格に対する評価額の割合は1階住戸なら40%、30階住戸なら20%という差が生まれます。数十階にもなるタワーマンションであれば、低層階と高層階の価格の開きが1億円以上になることも珍しくないため、節税効果もその分大きくなります。これを利用して、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。

 22年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、相続税評価額によって価額を3億円ほどまで引き下げ、さらに購入に当たっての借入金を債務として差し引いて2棟のマンションを0円として申告していました。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていました。

 そこで政府・与党は、相続税評価額のルールそのものの見直しに着手することを決めました。自民党税制調査会の会合では、国税庁からタワマン節税規制の必要性が示され、23年に不動産鑑定士や学者らで構成する有識者会議を設置することを決定。具体策を詰め、評価方法を定める財産評価基本通達の改正を行います。

<情報提供:エヌピー通信社>

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