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税務トピックス 2022月02月22日
政府は研究開発や投資、賃上げなどを行った企業に減税を行う租税特別措置(租特)の2020年度分の適用実績についての報告書を通常国会に提出しました。企業向けの租特は政策効果が不透明な上に巨大企業などに恩恵が偏っていることも指摘されていて、制度是正は長年の課題となっています。
租特は業界団体や関係省庁の要望を受け、与党の税制調査会が新設や拡充を決定しています。税収減につながる一方で政策効果が十分に検証されていないことや、巨大企業に恩恵が偏り公平性が損なわれているといった弊害も指摘されています。
民主党(当時)政権時代の2010年に成立した「租特透明化法」に基づき、政府は毎年、企業向け租特の適用額や件数についての報告書を国会に提出するようになりました。今回提出されたのは20年度分の報告書で、財務省は報告書の数字をもとに全体の減税額を計算します。適用実績が初めて公表された11年度は減税額が9049億円でしたが、成長戦略を掲げる第2次安倍晋三政権以降に一部租特は拡充され、14年度以降は毎年度の減税額が2兆円程度にのぼっています。20年度も同程度になる見込みで、10年間で計17兆円程度に達する見通しです。
減税額としては研究開発に使った費用の一部を法人税から差し引ける「研究開発税制」や、賃上げを行った企業に税制優遇を行う「賃上げ税制」などが特に大きくなっています。この2つは20年度分についても減税額が判明していて、研究開発税制は5053億円、賃上げ税制は1650億円でした。
租特は中小企業のみを対象としたものもありますが、研究開発費や設備投資額などに応じて優遇する仕組みのものも多く、資金の少ない中小などは恩恵が限定されます。実際、研究開発税制では資本金100億円超の巨大企業が適用件数の54%、額では93%を占めています。税理士の試算によると、巨大企業は租特による大きな減税効果により、中小などに比べて実際の法人税負担率が大幅に低くなっているそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>
税務トピックス 2022月02月22日
確定申告シーズンとなった中で、昨年にかかった医療費のレシートをこれから整理しようという人もいると思われます。
1年間の医療費が10万円を超えた時には、超過分を所得から差し引ける「医療費控除」の制度が使えるからです。
確定申告という年に1回の税金の手続きでは処理の方法をめぐって頭を悩ませる人も多く、医療費控除でも毎年多くの疑問が出ています。
例えば、昨年12月から今年1月にかけて入院をした時などの医療費は、昨年と今年のどちらの医療費に含まれるのでしょうか。
こうしたケースでは、原則として「支払った日」が属する年の医療費として扱うのが正しい処理となります。昨年末から継続的に治療を受けていたとしても、その代金をまとめて支払ったのが今年に入ってからであれば今年の医療費となるというわけです。
またクレジットカード払いならカードを切った日が判定のタイミングとなり、たとえその後分割払いを選んだとしても、医療費に関しては最初の決済時が属する年で判断します。
特にややこしいのは、入院などをして健康保険組合や共済組合から一時金などを受け取った時です。「医療費」を計算する際にはこれらの一時金を差し引かなければなりません。
すなわち、控除対象となる医療費が一時金の分だけ減額されることになります。
さらに入院が年をまたいでいるケースでは、それぞれの年にかかった医療費の割合に応じて各年の一時金の受取額を案分しなければならないので注意が必要です。
例えば一時金が30万円で、対象となる医療の費用が昨年は医療費全体の4割、今年が6割だとするなら、それぞれ昨年の医療費から12万円、今年の医療費から18万円を差し引くのが正しい計算方法となります。
<情報提供:エヌピー通信社>
コラム 2022月02月15日
マンションやアパートを賃貸する目的で建物を建築した際には、その建物の建築費・購入費に消費税が課されます。一般に建築費や購入額は高額となりますので、その消費税額も大きな金額になります。
この建物を居住用として賃貸するときは、建物の取得に係る消費税は非課税の売上げ(住宅の貸付け)に対応するものであるため、賃貸する側の仕入税額控除は、採用する計算方法により、取扱いが異なりました。
①「個別対応方式」…控除できない
②「一括比例配分方式」又は「全額控除」
…控除する余地あり
②を用いるため、金の売買により課税売上割合を意図的に引上げる事例もあったことから、居住用賃貸建物に係る消費税は、すべて控除できないこととなりました。
制限対象となる「居住用賃貸建物」を大まかに言うと、次のようなものになります。
①住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であること
②税抜きの対価が1,000万円以上である建物・建物附属設備
例えば、ホテル・旅館や販売までの間、居住用賃貸を行わないことが確実な販売用不動産のような、客観的に「課税売上げのみに対応するもの」は、仕入税額控除の制限対象となりません。それ以外のものが、制限対象の「居住用賃貸建物」となります。
ただし、居住用賃貸建物に商業用賃貸部分(課税売上げ部分)と居住用賃貸部分(非課税売上げ部分)がある場合に、これを合理的に区分しているときは、商業用賃貸部分の仕入税額控除は制限されません。
この新しいルールにより仕入税額控除の制限を受けた建物について、調整期間(大まかに言うと3年間)中に、次のような状況に変わった場合には、仕入れに係る消費税額の調整が行われます。
①建物を課税賃貸用に供した場合
②建物を他の者に譲渡した場合
この場合、取得時に仕入税額控除が適用できなかった消費税額のうち、課税売上げ(①又は②)に対応する部分として一定の算式により計算した金額を、仕入税額控除の消費税額に加算します。
税務トピックス 2022月02月15日
2022年度税制改正大綱には、税務調査での「後出し経費」のルールの見直しが盛り込まれました。また帳簿の不備に対して追徴課税を上乗せするペナルティーも盛り込まれ、これらは納税者にとってはさらに税務調査が厳しくなることを意味します。
税務調査の場面では、仮装・隠蔽や無申告を指摘された納税者が、それまで申告していなかった簿外経費を持ち出して所得を減らそうとする〝後出し〟をすることが少なくありませんでした。
こうした簿外経費を大綱では、「適正な記帳や申告が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大で、行政制裁を適用する際の立証に困難を伴う」としたうえで、簿外経費の〝後出し〟で「悪質な納税者を利するような事例も生じている」ことから、厳格化に踏み切りました。
23年からは、仮装・隠蔽・無申告のいずれかがあった年の確定申告書に記載されなかった経費については、帳簿書類などにより費用が生じたこと、支出先の相手先が明らかであり反面調査によって支出が確かめられることなどの条件を満たす場合を除いては、原則として損金にできないこととされました。
また過少申告加算税および無申告加算税については、税務調査時に調査官から求められた帳簿を提出できなかったり、売上金額や収入金額の記帳が不十分だったりしたときには、通常の過少申告加算税や無申告加算税の額に、ペナルティーが加算される見直しが盛り込まれました。
具体的には、帳簿を提出できないか、提出したとしても売上金額または収入金額の2分の1以上が記載されていなかったときには本則の加算税に10%が上乗せされます。たとえ提出したとしても、売上金額または収入金額の3分の1以上が記載されていなかったときは5%が上乗せされるというものです。24年1月以降に法定申告期限が到来する国税に適用されることとなっています。
<情報提供:エヌピー通信社>
税務トピックス 2022月02月8日
昨年12月に決定した2022年度の与党税制改正大綱は、「賃上げ税制」の拡充など岸田文雄政権の看板政策を前面に押し出す内容となりました。自民党税調の宮沢洋一会長は「成長から分配へという政策の第一歩を税制で支援することができた」と胸を張りますが、制度の使い手である事業者からは厳しい評価も聞こえてきます。
国は今回の税制改正で、賃上げした企業に対する優遇税制の控除率を最大で大企業は30%、中小企業は40%に引き上げます。岸田政権が掲げる「成長と分配の好循環」につなげる狙いですが、新潟県柏崎市で自動車向け部品の製造会社を経営する男性は「従業員の賃上げをしても税優遇を受けられるのは一回きりだが、一度賃上げした賃金は簡単には下げられない。経済の先行きが不透明な中、多少制度で優遇されたからといって簡単に賃上げなどできない」と苦言を呈します。男性の会社は決算で黒字を出していますが、これまで制度を利用したことはないといい、「制度自体が企業の雇用実態に合っておらず、使いにくい」と明かします。
静岡県熱海市でコンサルタント会社を営む男性も、賃上げ税制の実効性に疑問を抱いているといいます。男性は「賃上げを本気で実現したいなら、税制や補助金以外の優遇策を講じるか、資産税など遊休資産に対する課税を検討すべきだ。ただ、遊休資産への課税を制度化すると、優良企業の海外移転が加速する可能性もある」と見ています。
一方、今回の税制改正では、金融所得課税の見直しや炭素税の導入に向けた議論は見送られました。税制の専門家も「地球温暖化への対応や格差の是正など、日本の経済や社会が抱えている諸課題を全て先送りした税制だ」と指摘するなど、全体として厳しい評価に直面する税制改正となりました。
<情報提供:エヌピー通信社>
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