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税務トピックス 2024月08月27日

札幌不服審に税理士が嘆願書

 札幌国税局に不当な課税を迫られたとして損害賠償を求めている複数事業者の顧問税理士が7月、札幌国税不服審判所に、「審判官の職権によりきちんと事実関係の調査確認をしていただきたい」などとする嘆願書を提出しました。国税当局の調査を「明らかに〝足りていない部分〟がある」と断じています。

 嘆願書を提出した税理士は審判官に適切な事実確認を求めたうえで、「そのために審理期間が長期化するのはやむを得ない」と覚悟を示し、「『納税者の正当な権利利益の救済と税務行政の適正な運営』という審判所の使命を踏まえ、正義の理念と公正中立な立場により、きちんとした『税務行政部内の最終判断』を下して頂きたいと願っております」と結んでいます。

 同氏が顧問税理士を務めた事業者は、当局が2種類の追徴税額を書面で示し、税理士を排除しなければ高い方の税額になると脅されて税理士の排除を求められたそうです。「2種類の税額」には9500万円もの差があったとされます。

 当該事業者は、前任の税理士が担当していた時期に、課税逃れのために所得を過少に申告していますが、その点については「原処分庁の調査により発覚して以降、審査請求人は猛省し、全ての事実を明らかにして、原処分庁による申告所得の把握に協力してまいりました」と事業者の姿勢を擁護したうえで、「そうであったにもかかわらず、原処分庁は、証拠資料等の検討を十分に行わず、事件の全容を把握しようとせずに、一方的な更正処分を行いました」「当初申告が不正だったからと言って、原処分庁自らが、適正な所得把握を放棄して、何をやっても良いわけではありません」と国税当局の姿勢を糾弾しています。

 不服審判所にはさらに、「本審査請求案件につきましては、権利救済機関としての『国税不服審判所の存在意義が問われている』と考えています」と訴えかけています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2024月08月20日

《コラム》実務で使える就業規則とは

◆就業規則の問題点
 「就業規則を作ったのに実務で使えない」と感じたことはありませんか。例えば、就業規則に定めた解雇事由や懲戒事由に該当するとして行った解雇処分や懲戒処分について、労働者が不服として労働基準監督署に申告をし、又は、裁判になった場合、会社が不利になったり負けたりということが少なくありません。会社としては、「ただ就業規則の記載に沿った処分をしただけなのに」という感想を抱いてしまいます。
 この問題の原因が、就業規則の内容にあることは多いです。現状の日本の労働法制では、法律の表現には抽象的で画一的なものが多く、具体的な考え方や判断基準はこれまでの膨大な量の裁判例が蓄積されたものから成り立っているからです。つまり、就業規則の内容も、法律の文言に沿った表現での記載だけでは足りず、過去の裁判例を踏まえた具体的な内容にしなければ、実際の労務トラブルに対応できなくなってしまうのです。

◆主な原因は2つ
 抽象的な法律表現による就業規則と、裁判例を意識した内容の就業規則との違いは、次の2つの視点が意識されているかいないかに大きな違いがあります。この2点の意識が薄い就業規則に沿って、会社の行為が行われた場合には、会社に不利な結果になることがあります。
 ①解雇権濫用法理
 ②合理的限定解釈
 この2つをごく簡単に説明すると、法律上は会社の権利として認められる行為であっても、裁判所や労働基準監督署から「それはやり過ぎ」と一定の制限がかかることです。例えば「解雇事由」や「懲戒事由」は、原則として会社が自由に定めることができる権利ですが、実際の運用において、「労働者の起こした問題と比較して、その処分は重すぎる」として無効とされることがあります。これは会社が権利を濫用したとしての、解雇権濫用法理にあたります。また、会社が規定した就業規則の内容が広すぎる、例えば、「兼業・副業を全面的に禁止する」との規定について、裁判所が「業務に支障を来たさない範囲での兼業・副業まで禁止すべきでない」と判断することがありますが、これは、会社が定めた「全面禁止」を修正し、「合理的な範囲で解釈すべき」と合理的限定解釈がされたことによります。

税務トピックス 2024月08月20日

相続税路線価 16年ぶり2%超上昇

 国税庁は7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる2024年分の路線価(1月1日時点)、いわゆる〝相続税路線価〟を発表しました。全国約31万5千地点の宅地の平均は前年比で2.3%上昇。上昇は3年連続で、上昇率が2%を超えるのは08年(上昇率10.0%)以来、じつに16年ぶりのこと。現在の算出方法となった10年以降では最大の上昇率となりました。

 また能登半島地震の被災地の相続税路線価には「調整率」が適用されます。被害の大きさに応じて評価額が10~45%引き下げられることが決定。適用は阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などに続き7例目です。23年2月28日~同24年末に相続した土地と、23年、24年に贈与を受けた土地が対象です。路線価に調整率を乗じて評価額を算出。調整率が最も高かったのは輪島市河井町や珠洲市飯田町などの「0.55」(引下率45%)でした。

 また、原発事故によって24年1月1日時点で「帰還困難区域」に指定されている域内の土地については「路線価等を定めることが困難」であるため、「23年分と同様に相続税等の申告にあたってはその価額を『0』として差し支えない」こととされています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2024月08月13日

《コラム》相続に備える道路調査

 相続する土地に建物を新築できるのか、自身で活用するにしても売却するにしても、事前に確認する必要があります。

◆2m以上の接道義務が鉄則
 最初に押さえておくことは、建物を建てるために、その敷地が建築基準法の道路で幅員4m以上のものに原則2m以上、接道する必要があることです。
 建築基準法の道路の主なものは、国道、県道、市道など、道路法の道路(42条1項1号道路)、分譲宅地を造成するとき、事業者等が築造し、市町村長などの指定を受けた位置指定道路(42条1項5号道路)、建築基準法施行時に建物があった幅員4m未満の2項道路(42条2項道路)などです。

◆役所で道路の種別を調査する
 前面道路の種別は市町村の建築指導課などで確認できます。また、道路の幅員や敷地との境界は、道路管理課などで確認できます。自治体によっては、WEBサイトに道路図を公開していますので、役所まで出向かず調べることもできます。
 建築基準法の道路の種別は、指定道路図などで確認し、道路の幅員や敷地との境界点については、認定道路図、道路区域線図、道路台帳平面図などで確認できます。

◆敷地と道路の境界標を確認する
 敷地と道路の境界には、自治体が道路図を作成する際、プレートやコンクリート製などの標識を設置しています。他に金属鋲の場合もあります。これらの標識は、図面だけでなく現地で目視して確認しましょう。
 2項道路の場合は、建物、門扉、擁壁等を道路の中心線から2m後退させねばならず、土地家屋調査士などに測量を依頼して境界を確定させる必要があります。その際、道路として提供する部分を分筆して登記する、さらに、自治体にセットバック部分を寄付することもあります。
 セットバックする際は、道路部分に越境している門扉、擁壁などを地権者の負担で取り壊すことが必要になります。また、自治体が主導して地権者との狭あい協議によって道路の拡幅を進めるときは、市町村から費用を助成してもらえます。

◆固定資産税は申請すれば非課税になる
 セットバックして公共の用に供する道路とした土地は、固定資産税が非課税になります。市町村が分筆登記された内容を把握し、非課税としてくれる場合もありますが、通常は地権者から自治体に、非課税としてもらえるよう申請を要します。

コラム 2024月08月13日

《コラム》マイホーム買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

◆買換え時に売却損が出た時の特例
 通常、不動産の譲渡所得については、他の不動産の譲渡所得以外の所得と損益通算ができませんが、マイホーム(旧居)を売却して、新たにマイホーム(新居)を購入した場合に、旧居の譲渡損失が生じた時は、一定の要件を満たしていればその譲渡損失を給与所得や事業所得などの他の所得から控除することができます。
 また、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。
 この特例の名称は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。

◆繰越控除「のみ」受けられないケースも
 「買換え」の特例ですから、新居を取得・もしくは取得予定でなければ適用できません。他にも、旧居は5年以上所有していること、住まなくなって取り壊した場合は3年経過する日の属する12月31日までに新居を取得、新居を取得した年の年末に償還期間10年以上の住宅ローン控除がある、過去2年間他のマイホームに係る特例を受けていないこと等の要件があります。
 また、この特例には「繰越控除のみ受けられない」条件が設けられており、
①「繰越控除適用年」の12月31日において、新居について償還期間10年以上の住宅ローンが無い
②合計所得金額が3,000万円を超える年(その年のみ適用できない)
③旧居の敷地面積が500㎡を超える場合は、超えた部分については繰越控除不可
 以上の場合は繰越控除が認められません。

◆住宅ローン控除と併用可能だが
 マイホーム買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除は、新居の住宅ローン控除が要件に含まれていますから当然併用が可能です。ただし、繰越控除が翌年に残るということは、その年の所得額は0円ということですから、その年の住宅ローン控除で引かれる税額は0円になります。繰り越す譲渡損失が所得金額と比べてとても大きいと、最大4年間は住宅ローン控除の恩恵が受けられず、住宅ローン控除期間を後ろ倒しにはしてくれませんから、適用期間は減ってしまうことになります。

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