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コラム 2022月05月10日

【時事解説】中小企業におけるIT人材の確保と育成 その1

 感染症流行などの要因に伴い中小企業におけるデジタル化の推進が求められる中、ITツールの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用するIT人材の確保と育成が求められます。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2021年版』において実施されたアンケート調査に基づき、中小企業におけるIT人材の確保・育成の現状と課題についてみていきましょう。

 IT人材の確保状況をIT人材のタイプ別にみると、「確保できていない」と回答した企業の割合は、デジタル化の取組み全体を統括できる人材で55.2%、ITツール・システムを企画・導入・開発できる人材で57.0%、ITツール・システムを保守・運用できる人材で46.6%となっており、多くの中小企業がIT人材を確保できていないことがわかります。

 IT人材の確保における課題を回答割合の高い順にみると、「IT人材を採用・育成する体制が整っていない(57.1%)」、「IT人材に向けた魅力的な処遇を設定できない(30.6%)」、「人材難によりIT人材を採用できない(25.8%)」となっており、とくにIT人材を採用・育成するための体制面での課題を抱えていることがわかります。

 IT人材の確保方法及び育成方法についてみると、確保方法については、「既存社員の育成」と回答した割合がIT人材のタイプに関わらず最も高くなっています。また、育成方法については、「基本的に社員の主体性に任せている」と回答した割合がIT人材のタイプに関わらず最も高くなっており、体系的な育成制度が十分に整っていないことが推察されます。

 このように多くの中小企業がIT人材を確保できていないことに加え、IT人材を育成する体制が整えられていない状況にあるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

コラム 2022月05月10日

【時事解説】中小企業におけるIT人材の確保と育成 その2

では、中小企業ではIT人材の確保と育成が具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2021年版』において、IT人材の確保によりIoT事業の開発体制を構築し新規事業への参入を実現した企業の事例として取り上げられた、株式会社木幡計器製作所(大阪府)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社木幡計器製作所は、1909 年創業の圧力計専業メーカーです。同社社長は、管理コストを抑えつつ安全性の確保を実現したいユーザー企業側の潜在的なニーズを発見し、IoTシステムで管理することで、これまで独立していた工業計器のネットワーク化と遠隔での保全管理が可能になると考えました。しかし、IoT関連製品の新規事業開発に向けて、IT人材の確保が課題となりました。

 そこで同社は、大手電機メーカーから早期退職した電子回路のベテラン設計者2名を採用、翌年には更に2名、大手企業出身の専門人材も加わりました。大手企業と同社では企業文化が異なることから、一体感を高めるきっかけとして朝礼後の清掃において従業員をチームに分けて、社員間で意見交換する機会を作りました。また、IoT関連の展示会に出展する際に、中途採用メンバーとプロパー社員が一緒に準備を進めることで、プロパー社員の知識が増えていきました。 試作開発や従来製品の不具合の場面でもプロパー社員と中途採用メンバーが協力することで距離が縮まり、社内にIoT製品開発に向けた土壌が醸成されていきました。こうして「後付けIoTセンサ・無線通信ユニット」を開発するに至り、同社の主力製品の一つにまで成長していきました。

 このようにIT人材を確保した場合には、既存社員との融合がカギとなるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

税務トピックス 2022月05月3日

(前編)役員等の勤続年数5年以下の者に対する退職手当等の計算に注意!

 原則、退職所得の金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その者の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされていますが、役員等としての勤続年数が5年以下の者(以下:特定役員等)が、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものについては、この残額の2分の1とする措置はなくなっております。
 特定役員等とは、役員等勤続年数が5年以下である者をいいますが、この「役員等」とは、
① 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人や法人の経営に従事している者で一定の者
② 国会議員や地方公共団体の議会の議員
③ 国家公務員や地方公務員をいいます。

 また、役員等勤続年数とは、役員等に支払われる退職手当等の勤続期間のうち、役員等として勤務した期間の年数をいいます。
 役員等勤続年数の算定は、1年未満の端数がある場合には、その端数を1年に切り上げます。
 例えば、役員等として勤務した期間が4年1月の場合は、役員等勤続年数が5年となることから、特定役員等に該当します。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和4年3月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

税務トピックス 2022月05月3日

(後編)役員等の勤続年数5年以下の者に対する退職手当等の計算に注意!

(前編からのつづき)

 また、役員等として勤務した期間が5年1月の場合は役員等勤続年数が6年に該当しますので、特定役員等には該当せず、受け取る退職金は2分の1課税の適用となります。
 その退職所得の金額の計算方法は、
①その年中に支払われる退職手当等が、特定役員退職手当等のみの場合は「特定役員退職手当等の収入金額-退職所得控除額」
②その年中に支払われる退職手当等が、特定役員退職手当等と特定役員退職手当等以外の退職手当等の場合は、「特定役員退職手当等の収入金額-特定役員退職所得控除額」と「{退職手当等の収入金額-(退職所得控除額-特定役員退職所得控除額)}×1/2」の合計額

 上記の「特定役員退職所得控除額」は、重複期間がない場合は「40万円×特定役員等勤続年数」、重複期間がある場合は「40万円×(特定役員等勤続年数-重複勤続年数)+20万円×重複勤続年数」の算式により求めます。
 上記のとおり、特定役員等の勤続期間と特定役員等でない勤続期間の両方があり、その2つの期間が重複している場合には、その重複する勤続年数部分について調整計算を行う必要がありますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和4年3月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

お知らせ 2022月04月26日

《コラム》子供のない夫婦の相続

 子供のない夫婦が将来起きる相続を考えるとき、誰に自分の財産を託したいか、遺言書で自らの意思をはっきり残しておくことが大切です。

◆相続人の範囲
 遺言書がなく、遺産分割協議もできない場合、財産は、相続人に法定相続分で引き継がれます。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、被相続人の外に血族がいるときは、被相続人の子供(第1順位)、被相続人の父母など直系尊属(第2順位)、被相続人の兄弟姉妹(第3順位)の順で、それぞれが配偶者とともに相続人となります。

◆甥、姪への予期せぬ相続
 被相続人に子がなく、両親も他界、兄弟姉妹も既に死亡しているときは、兄弟姉妹の子(被相続人にとっては、自身の甥、姪)が代襲相続人として相続することになります。兄弟姉妹との間で、生前、仲たがいしていた場合、甥、姪にとって思いもかけない財産が舞い降り、お互い想定していなかった財産移転が起きることもあります。

◆遺言書で財産の引継ぎ先を指定する
 このような意図しない相続が行われないようにするためには、遺言書を作成しておくことで、財産を引き継がせたい人に渡すことができます。兄弟姉妹がいる場合でも、遺言書があれば配偶者に100%財産を渡すことができます。遺留分は兄弟姉妹にはありません。ただし、夫婦のどちらが先に亡くなるかは分からないため、夫婦それぞれで自分の財産を相手に渡す遺言書を作成しておく必要があります。

◆自分の人生の総括を
 配偶者の外に財産を移転させたい場合には、公益団体等に寄附して社会貢献する遺贈寄附という方法もあります。遺言書を利用して自分の人生を総括し、自身の財産を承継してほしい人や団体に財産を移転することは、意義があるかもしれません。
 遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの方法があります。前者は公証人役場で公証人が立ち会って遺言書を作成してもらう方法。後者は自書で遺言書を作成する方法。令和2年7月から自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことも可能になりました。瑕疵のない遺言書を確実に作成したい場合は公正証書遺言とし、自身の意思を伝えることが主な目的であれば、自筆証書遺言で良いかもしれません。自身に合った方法を選択してはいかがでしょうか。

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