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コラム 2023月12月5日

《コラム》相続対策と課税の公平

 タワーマンション事件では、被相続人が事業承継の目的で取得したマンションの相続税評価は、財産評価基本通達(評価通達)によるのではなく、総則6項を適用した鑑定評価額によるとして追徴課税されました。
 相続人は相続税評価額をマンション取得のための借入金と相殺し、相続税額をゼロと申告しましたが、銀行に残された資料等から一連の取引が租税負担の軽減を意図したものであると認定されました。

◆相続対策に対する課税
 相続対策は、生前に財産を組替え、移転させることにより、課税価格を少なくして相続時の税負担を圧縮させるものですが、これらは法令に従う限り、本来、適法であり、実際、申告には路線価等に基づく評価が求められます。
 一方で、評価通達には、総則6項が別に定められており、通達による評価が著しく不適当と認められるときは、評価通達ではなく、国税庁長官の指示を受けて評価すると規定されていますが、その場合は納税者の意に反して課税されることになります。総則6項の「著しく不適当」がどの程度を指すのか明確に規定されていませんが、最高裁は実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合には、合理的な理由があると認められるので、評価通達によらなくても平等原則に反しないと判示しました。

◆租税法律主義との相克
 評価通達によらずに課税庁が評価するとなると、そこには課税庁の恣意性が働き、納税者にとっては自分の申告が適法か予測できず、いつ否認されるかわからない不安定なものとなってしまいます。
 総則6項を適用するのは、行き過ぎた税負担の圧縮が行われたときとされますが、その判断を納税者に求めるのは無理があり、課税庁が財産評価を決め、変更することを自由にできるのであれば、申告納税制度の根幹が損なわれてしまいます。

◆租税公平主義を意識した相続対策
 国税庁はパブリックコメントでマンションなど居住用の区分所有財産の評価について、市場価格と相続税評価額との乖離を埋める基準を公表しましたが、相続対策に対する判断基準を示しているわけではありません。課税庁には恣意的な課税をさせないため、適正な課税ルールを法律で定めることを求めつつ、納税者には今後も租税公平主義を意識した相続対策が求められそうです。

税務トピックス 2023月12月5日

税の金言「結婚は年内、離婚は年明け」

 昔から有名人の結婚や離婚が公表されるのは年末年始が多いといわれます。この理由の一つには、私生活をオープンにしたくない芸能人が、ワイドショーの放送が特番などでつぶれる年末年始に報告することで、情報の拡散を抑えることにあるそうです。

 芸能人ではない一般人でも、年末や年始を待って結婚や離婚を考える人はいるかもしれません。その理由は「税金」です。

 結婚もしくは離婚を考えているなら、税金面だけを見れば「結婚は年内に、離婚は年が明けてから」といわれます。その理由は、所得から一定額を差し引ける配偶者控除の適用条件が「その年の12月31日時点で配偶者がいること」と決められているからです。結婚生活がたとえ大晦日だけの1日でも、配偶者控除は適用可能。そのため、結婚をするなら年内に駆け込んだほうが税金面では得ということになります。もっとも2018年からは配偶者控除には所得1千万円という上限がかけられているため、高所得者にはあまり関係ないことかもしれません。

 同じ理由で、たとえ結婚生活が破綻していても、離婚するのは年明けまで待ったほうが税金面のみをみれば得といえます。前述のとおり配偶者控除は12月31日時点での状況で判断されるため、その年の大半が婚姻期間であっても、大晦日の時点で離婚していればその1年について控除が受けられません。

 もちろん結婚や離婚であれ、税金の損得だけで決める話ではありません。ただ1日の違いで控除できるかどうかが変わることは頭の片隅に置いておきたいところです。

<情報提供:エヌピー通信社>

その他 2023月11月28日

【時事解説】エネルギー安定供給と脱炭素を両立させるCCSとは その1

 脱炭素は世界共通の課題で、各国様々な取り組みを講じています。中でも、温暖化防止のため、火力発電を削減しようという動きが広まっています。2021年、COP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、気温上昇に歯止めをかけるため石炭火力発電を削減する方向が決まりました。
 というのも、発電の中で最もCO2の排出量が多いのは火力発電です。ただ、CO2を削減しようと火力発電をやめて、太陽光発電だけにすると、電力を賄いきれず電力供給に問題が生じる恐れがあります。

 そんな中、注目を集めているのがCCSです。これは、Carbon Capture and Storageの略で、日本語では「CO2の回収・貯留」となります。具体的にいうと、火力発電などで出されるCO2を回収して地中に埋める脱炭素技術を指します。この方法により、大気中へ放出されるCO2を減少させることができます。CCSは既存の火力発電施設を稼働し続けられるため、エネルギー安定供給と脱炭素を両立させる技術として期待されています。回収されたCO2は地中に封じ込められ、最終的には岩と反応し鉱物を形成します。あるいは、塩水に徐々に溶かす方法もあります。

 近年では、回収したCO2を化学品原料などへ再利用する「CCUS」への期待も高まっています。CCUSの具体例を挙げると、回収した炭素をカーボンナノチューブという素材の成分に変え、それをリチウムイオン電池や電子機器、自動車部品の素材として用いる方法があります。
 また、手法の一つとして、EOR(原油増進回収)は、古い油田にCO2を注入することで、油田の寿命を延ばせるようにもなります。

 削減しきれないCO2を地中に貯蔵するCCSは、カーボンニュートラルの実現に不可欠といわれています。今後、世界各国における取り組みは活発化しそうです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

その他 2023月11月28日

【時事解説】エネルギー安定供給と脱炭素を両立させるCCSとは その2

 脱炭素技術の中で注目を集めるCCS(CO2の回収・貯留)。火力発電などで出されるCO2を回収して地中に埋める脱炭素技術です。既存の火力発電を稼働しながらCO2を削減するため、エネルギーの安定供給と脱炭素を両立させると期待が寄せられています。

 日本は国内に貯留候補地が多くあるといわれていますが、普及に向けては安全性について地元自治体の理解が不可欠です。現在、海外貯留の実績を積み重ねており、これが自治体との調整に好材料となり、貯留促進の追い風になるとみられています。

 政府の支援も追い風の一つです。政府はCCSについて、技術研究、パイロット事業支援へ乗り出す方針を打ち出しています。CCSに関する事業法の整備も進められています。

 すでに、三菱重工業や大阪ガス、JERAなど、多数の企業が事業に乗り出すことが報じられています。

 日本の強みは一貫したCCSのバリューチェーンを有している点です。CCSの工程は、二酸化炭素の分離回収から始まり、液化輸送、CO2パイプライン、貯留、そしてトータルエンジニアリングなど、様々な要素で構成されています。日本はCCSのそれぞれの工程において様々な技術を有しています。

 世界全体では、欧州、英国などが国による支援をもとに導入支援段階に入っています。また、米国では、インフレ抑制法(IRA)により、エネルギーや気候変動分野を支援する方針が打ち出され、CCSへの補助金も増加しています。この中、米石油最大手のエクソンなど、事業に取り組む企業が多数報じられています。コスト面などまだまだ課題は残りますが、各国とも、本格的な実用化に向けた課題の解消を目指しています。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

その他 2023月11月21日

【時事解説】好循環のインフレに転換できるか その1

 ようやく我が国もインフレが到来しました。ただ、日銀は、今のインフレは「悪いインフレ」であり、それを「良いインフレ」に転化できるようにしたいとして金融緩和を維持しています。
 インフレはその発生の違いにより、以下の2種類に大別されます。強い需要が物価を引き上げる「デマンドプル型」と、供給側の商品の原材料価格上昇が物価を押し上げる「コストプッシュ型」です。

 デマンドプル型は需要が需要を呼ぶ形でインフレを起こします。その結果、経済が拡大し、更なる物価上昇を呼ぶという、経済の好循環を引き起こします。
 一方、コストプッシュ型は原材料価格上昇が物価を押し上げます。原材料等の仕入価格が上昇すると、企業の利益を圧迫します。利益確保のため、まずは経費削減に努力しますが、それも限界となり、やむをえず商品価格を引き上げます。コストプッシュ型インフレでは経済の好循環は期待できません。
 デマンドプル型は経済の成長過程で生じる「良いインフレ」ですが、コストプッシュ型は国民生活が一層苦しくなる「悪いインフレ」となります。

 日銀はマネー流通量を飛躍的に増加させることでマネーの相対的価値を減少させ、モノの需要を活性化させることにより、デマンドプル型インフレを惹起させようとしてきました。しかし、今のインフレはコストプッシュ型です。原油を筆頭に、鉄、木材などの資材価格は上昇傾向にあり、さらに円安は輸入原材料価格の上昇に拍車をかけます。

 これは明らかに悪いインフレとなりますが、当初は悪いインフレでも、それを良いインフレに転化できればいいのではないかという議論も見受けられます。良いインフレと悪いインフレを分かつポイントは、物価の上昇に伴い賃金が増加するかどうかです。その点を会計的視点から見ていきましょう。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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